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「身体拘束は仕方がない」という概念に終止符を。介護士のあるべき姿とは?

「身体拘束は仕方がない」という概念に終止符を。介護士のあるべき姿とは?

介護における身体拘束の向き合い方についてのお悩みの介護職の方へ 「身体拘束廃止」にむけて行動を起こすヒントを専門家が回答します!【回答者:伊藤 浩一】


本日のお悩み

身体拘束の向き合い方についてご相談です。
普段、介護士として従事しています。
安全を考えると介護における身体拘束は必要だと思う反面、心苦しく悩んでいます。
どのように身体拘束を理解することが大事なのか、教えてください。

「身体拘束は仕方がない」という概念に終止符を。介護士のあるべき姿とは?

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伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員

安易な身体拘束は虐待と捉える

みなさんは、感覚的に「身体拘束」は「虐待」ではないと、とらえていませんか?
「虐待なんてとんでもないけど、身体拘束は必要に応じてしかたないよ」という考えです。
厚生労働省のHPでは安易な身体拘束=虐待と表現しています。

そもそも、身体拘束の漢字を分解すると「からだをとらえて(拘)たばねる(束)」と解けます。
虐待は「待ち受けているものを酷く扱って傷つける(虐)」と解けます。
どちらも仕方がないとは言えない表現ですよね。

では、仕方がない身体拘束とはどんな状況でしょう?
それは「安易な判断ではない」 ことを証明することです。

身体拘束が「安易な判断ではない=緊急でやむを得ない 」場合

厚生労働省では、「安易な判断ではない=緊急でやむを得ない 」場合とし、その例外的三要件を示しています。

① 切迫性:緊急性があること

② 非代替性:他に代替する手段がないこと

③ 一時性:一時的であること

この3つは全て満たさなければなりませんので、一つでもあてはならないと判断された場合は、安易な身体拘束を行なっている=虐待をしているとなります。
そして、万が一この要件を満たした場合も、その様態や時間・利用者の心身状況並びに、緊急でやむを得ない理由を記録しなければなりません(2年間保存)。

つまり、一刻も身体拘束を廃止できるように組織として取り組んでいるか?が問われています。

※厚生労働省「身体拘束に対する考え方」より(厚生労働省のPDFに遷移します)

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要件が満たされない場合は「身体拘束廃止未実施減算」の適用

要件を満たされないケースが1ケースでも認められれば、「身体拘束廃止未実施減算」の適用となります(2018年から)。
この減算は、事実か生じた月の翌月から改善か認められた月までの間について、入居者全員の所定単位数から減算(10%/日)するという制度です。

※厚生労働省「平成30年度介護報酬改定の主な事項について」より(厚生労働省のPDFに遷移します)

要件が満たされない身体拘束は介護施設側も経営的に厳しくなる

上述した三要件が満たされず、「身体拘束廃止未実施減算」が適用された場合、介護施設側も経営的に大きな損失があります。

例えば、入居者数100名の特養施設があり、上述した三要件が満たされず「身体拘束廃止未実施減算」が適用されたとします。
1日の介護報酬がひとりあたり、1,000単位 (*特別養護老人ホームの要介護5の方をイメージ、
*わかりやすいようにキリの良い数字にしています)
1単位10円(*本来は1級地〜7級地の地域区分があります。都心部は級地が高くなり、単位数が最高20%上乗せになります)とすると・・・

<通常の収入 *自己負担を除く>                                                                       1,000単位/日×10円×100人×30日=3,000万円

<身体拘束廃止未実施減算が適用された場合の収入 *自己負担を除く>                                                                          1,000単位/日×10円×100人×0.9(10%減)×30日=2,700万円

となり、月の事業所収入は、300万円のマイナスになります。
300万円あれば、月給30万円の方10人雇用できます。
また、介護機器の導入などさまざまな設備投資もできそうですね。

私も施設長の端くれ、もし自分の施設がこのような状況になれば経営的に大きなダメージとなるのは必須と想像つきます。
さらに、この状況が長く続けば、300万円のマイナスが月毎に膨らみます。ゾッとしますよね。

収入が減った状況で職員の給料がちゃんと払えるのか?元金がないから昇給もままならず、お風呂が壊れたから治してくれと言われたけど修理代がないので直せない、そんな施設運営に職員のみんなが嫌になって退職してしまったらどうしよう??なんて・・

質問者さん、例えば施設長から「身体拘束廃止未実施減算で収入が減ってしまったので、今月から給料減らさせてくれ・・頼む」と言われたら「はい、わかりました」 とはなりませんよね。

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まとめ

いかがでしょうか?「身体拘束は仕方がない」という概念はもうありません。
安易な判断での身体拘束=虐待です。
人権擁護の観点から法令でも厳しく対処される世の中になっています。
この点を踏まえ、自施設の身体拘束に対する向き合い方を振り返ってみてください。

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この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

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