退職代行はアリ?メリット・デメリットと後悔しない選び方を徹底解説

退職代行はアリ?メリット・デメリットと後悔しない選び方を徹底解説

退職代行を使うべきか迷っている方へ。介護現場と経営の両面を知る筆者が、退職代行のメリット・デメリット、実例、後悔しない選び方をわかりやすく解説します。【執筆者/専門家:伊藤 浩一】


\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職・ヘルパー」の求人を見る

本日のお悩み:介護職で退職代行を使うべきか悩んでいる

退職代行で今の職場を退職するか迷っています。ただ、退職代行を利用することには、メリットもデメリットもあると思います。職員が退職代行を使う際のメリット・デメリットや注意すべきことを教えてください。

退職代行という選択に迷うあなたへ―現場と経営、両方を見てきた私から伝えたいこと―

■執筆者/専門家

伊藤 浩一

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/14

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

「もう限界だ」「直接言うのが怖い」「話してもどうせ変わらない」

そんな思いを抱えながら、退職代行の利用を考えている方も多いのではないでしょうか。
近年、退職代行は特別なものではなくなり、自分を守るための1つの手段として認知されるようになりました。

私自身、長年介護現場に関わり、現在は施設を運営する立場にありますが、これまでに1名だけ、退職代行を使って退職した職員を見送った経験があります。今回は、現場・経営の両方を見てきた立場から、退職代行のメリット・デメリットと実体験を通じて感じたこと、本当に大切にしてほしい視点についてお伝えしたいと思います。

退職代行を利用する3つのメリット

私は、退職代行には3つのメリットがあると考えます。

■1.精神的負担の軽減

1つ目は、精神的な負担を大きく減らせることです。上司に退職の意思を伝えることが強いストレスになる場合、それだけで心身が疲弊してしまいます。その「最後の壁」を代わりに引き受けてくれるのが、退職代行なのです。

■2.引き止めや感情的なやり取りの回避

2つ目は、引き止めや感情的なやりとりを避けられることです。相手に悪意がなくても、「もう少し頑張れないか」「今辞められると困る」といった言葉がプレッシャーになることは少なくありません。そうした場面を避けられるのは、大きな利点といえるでしょう。

■3.心身を守るための早期退職という選択肢

3つ目は、心身を壊す前に職場を離れられることです。眠れない、体調が悪い、気力がわかない。そうした状態であれば、「きれいに辞めること」よりも「自分を守ること」を優先すべきです。退職代行は、そのための避難手段になることもあります。

知っておくべきデメリット

一方で、デメリットもあります。

■1.人間関係が途切れてしまうリスク

まず、人との関係が断絶されやすいことです。お世話になった同僚や先輩に感謝を伝える機会を失うため、自分の中で気持ちの整理がつかないまま終わってしまうケースもあるでしょう。

■2.転職時に説明しづらくなる

次に、転職先での説明が難しくなることです。転職の場面では、前職の退職理由や経緯を自分の言葉で語れないと、不安や後悔につながりやすくなります。

■3.根本的な問題が解決されない可能性

さらに、退職に至った問題点が、解決されないまま終わる可能性があるのもデメリットです。退職代行は「辞めること」しか解決してくれないので、「なぜそこまで追い込まれたのか」は本人が考え、解決するしかありません。整理ができないまま次に進むと、同じ悩みを繰り返すこともあります。

実際にあった1つのケース

■【実例あり】能力は高いが退職に至った職員

ここで、私自身が経験したケースを紹介します。退職代行を使って退職した職員は、総務職として約5年間働いていました。事務能力やパソコンスキルが高く、仕事ができる人材だったのを覚えています。

しかし、常に不満を抱えながら働いている印象があり、人間関係では課題を抱えていました。無意識のうちに同僚を見下すような態度が出てしまい、周囲との摩擦が生じていたのです。

それで私は、昇級試験の際に「人との関わり方を見直す努力」を条件として伝えました。能力を否定したわけではなく、組織のことを考えての判断です。ところが、その条件を「自分は認められていない」と受け取ってしまい、次第に無断欠勤が続くようになりました。そして、最終的には退職代行を通じて退職の連絡がきました。

退職代行は“原因”ではなく“結果”

この経験から私が感じたのは、退職代行は問題の“原因”ではなく、“結果”として現れる手段だということです。

■退職代行に至る心理的プロセス

不満を溜め込み、対話を諦め、孤立していった末に、最後の出口として選ばれるもの。それが退職代行だと思えたのです。ただ、多くの場合、そこに至るまでにはもっといろいろな道があります。もし、早い段階で自分のつらさを言葉にできていたら、違う道があったかもしれません。

だからこそ、退職代行を使うかどうかを決める前に、1つだけ考えてほしいことがあります。それは、「自分自身に向き合えたのか?」ということです。

■人間関係断絶という深い代償

退職代行を手段として利用するデメリットに、「人間関係の断絶」があることは前述した通りです。もちろん精神的に追い込まれている場合は、意図的に環境をリセットすることも重要です。けれど、引き継ぎもなく、私物や書類もほったらかしにしてリセットするのは、組織に対してだけでなく、自分自身に対しても無責任な行動ではないでしょうか。

最後に:終わりよければすべてよし

私が大切にしている言葉に、「終わりよければすべてよし」があります。

これは、途中で失敗しなかった人が勝ち、という意味ではありません。どんなに悩み、迷い、苦しんだとしても、最後に自分で納得できる形で区切りをつけられたなら、その経験は必ず次につながる。そんな意味だと私は思っています。

最近は、アルムナイ採用(退職を卒業という言葉に置き換え、元社員を積極的に雇用する制度)も活発に行われています。退職して別の会社で働いてみたものの、客観的視点で辞めた会社を見た時に、その良さがわかってきた。そう思える人にとっては、とても意義のある方法でしょう。

企業側にとっても、元社員の再雇用には、他社で培った知識や経験を持ち帰ってもらえるメリットがあります。しかし、退職代行では、アルムナイ採用は期待できないかもしれませんね。

■退職代行を選ぶ前に考えたいこと

もちろん、退職代行は良いか悪いかで判断できるものではありません。その人の状況によっては、必要な手段であることも理解できます。ただ、その選択が「逃げた」のではなく、「考えて選んだ」と胸を張れるものであってほしい。そんなふうにも思います。

迷っているというのは、誠実に仕事と向き合ってきた証拠です。どうか、自分の人生にとって納得できる決断をしてください。

■あわせて読みたい記事

人間関係の悩みで退職。こんな私が介護職として復帰しても大丈夫? | ささえるラボ

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/articles/1115

人間関係の悩みで一度は辞めた介護職。こんな自分が介護職として再度、復帰しても大丈夫なのでしょうか?ー 介護職の方のお悩みに専門家がお答えします。 【執筆者:羽吹 さゆり】

自己都合退職と会社都合退職の違いは?失業給付や、社会保険料・住民税のことを知っておこう | ささえるラボ

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/articles/848

退職を考えている介護職の皆さんが、自分にあった職場を探し、前向きに転職活動をすることができるように退職後の失業給付や、社会保険料・住民税の納付についてまとめてみました。

\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職・ヘルパー」の求人を見る

この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

関連するキーワード


お悩み相談室

関連する投稿


【介護職の新人教育】仕事を覚えるのが遅い新人への指導法とは?施設長経験者が解説

【介護職の新人教育】仕事を覚えるのが遅い新人への指導法とは?施設長経験者が解説

介護施設で新人指導を担当されている方からのお悩みです。4カ所の特別養護老人ホームで施設長を務めた経験を持つ伊藤浩一さんに、新人介護職員を指導する際のポイントを詳しく解説していただきます。【執筆者/専門家:伊藤浩一】


高齢者がエアコンを嫌がる理由と対策とは?熱中症を防ぐために介護職員が実践したい声かけのポイント

高齢者がエアコンを嫌がる理由と対策とは?熱中症を防ぐために介護職員が実践したい声かけのポイント

介護現場で働く職員のかたからのお悩みです。訪問介護、グループホーム、居宅介護⽀援事業所などに従事した経験を持ち、介護関連のセミナーや講演に数多く登壇している羽吹さゆりさんにご回答いただきました。本記事では、高齢者のかたがエアコンをいやがる理由と対策について、詳しく解説していきます。【執筆者/専門家:羽吹 さゆり】


日本は超高齢社会に│高齢社会との違いや問題点、医療・介護現場の現状や対策を解説

日本は超高齢社会に│高齢社会との違いや問題点、医療・介護現場の現状や対策を解説

日本は世界に先駆けて、65歳以上の割合が21%を超える「超高齢社会」へと突入しました。それに伴い、医療・介護のニーズは、量と質の両面で急拡大しており、現場では業務負担の増大や人材不足が深刻な課題となっています。本記事では、「超高齢社会」の定義を整理した上で、医療・介護現場で顕在化している課題と、現場で行われている対応策について解説します。【執筆者:ささえるラボ編集部】


介護施設の外国人雇用完全ガイド|採用・受け入れの流れと定着のポイント

介護施設の外国人雇用完全ガイド|採用・受け入れの流れと定着のポイント

介護施設での外国人雇用を検討している方向けに、採用・受け入れの流れや特定技能・在留資格「介護」・EPA・育成就労制度の違い、外国人介護人材に選ばれる職場づくりのポイントを専門家が解説します。【執筆者/専門家:伊藤 浩一】


雨の日の訪問介護で気を付けることとは?ヘルパーが押さえたい4つのポイントを解説

雨の日の訪問介護で気を付けることとは?ヘルパーが押さえたい4つのポイントを解説

雨の日の訪問介護では、移動中の事故や利用者の転倒、体調変化への配慮が欠かせません。本記事では、訪問介護で働くヘルパーが雨の日に意識したい持ち物、安全対策、利用者対応のポイントを詳しく解説します。【執筆者/専門家:牧野 裕美】


マイナビ医療福祉キャリア 閲覧ランキング
【北海道・東北】
【関東・甲信越】
【北陸・東海】
【関西・中四国】
【九州・沖縄】

最新の投稿


介護職のやりがいを感じる5つの瞬間|仕事の魅力と長く続けるための工夫

介護職のやりがいを感じる5つの瞬間|仕事の魅力と長く続けるための工夫

護職のやりがいを感じる瞬間や、やりがいを感じなくなる原因、モチベーションを維持する方法を解説。介護職への転職・就職を考えている方や、現場で悩んでいる方必見の内容です。【執筆者/専門家:ささえるラボ編集部】


看護助手と介護助手の違いとは?それぞれの役割や仕事内容について解説

看護助手と介護助手の違いとは?それぞれの役割や仕事内容について解説

未経験から介護に関わる仕事への転職を検討しているかたからのお悩みです。介護福祉士や社会福祉士、ケアマネージャーの資格を持つ専門家の後藤晴紀さんに、看護助手と介護助手の違いについて解説していただきました。 【執筆者/専門家:後藤晴紀】


第212話 「ハロウィン」/ほっこり介護マンガ

第212話 「ハロウィン」/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


利用者と家族の意向が合わない時はどうする?介護職員が押さえたい対応のポイントを解説

利用者と家族の意向が合わない時はどうする?介護職員が押さえたい対応のポイントを解説

利用者と家族の意向が一致しない場合、ケアマネジャーや介護職員はどのように対応すべきなのでしょうか。本人意思の尊重やアドボカシーの考え方、多職種連携の重要性について専門家がわかりやすく解説します。【執筆者/専門家:古畑 佑奈】


生活介護の「送迎加算」とは?算定要件と現場職員が知っておきたい注意点

生活介護の「送迎加算」とは?算定要件と現場職員が知っておきたい注意点

生活介護の送迎加算(Ⅰ)(Ⅱ)について、算定要件や単位数、重度利用者が多い事業所への加算、片道算定の考え方を解説。自宅以外への送迎や外部委託、同一敷地内での取り扱いに加え、請求ミスを防ぐ記録管理、安全な送迎体制、職員の労働時間管理まで、社労士の視点でわかりやすく紹介します。【執筆者/専門家:山本 武尊】


マイナビ医療福祉キャリア
「マイナビ医療福祉キャリア」は、医療・福祉・介護職に特化した中途、パート向け求人サイトです。
医師、看護師、薬剤師、歯科医師、介護職・ヘルパー、保育士、リハビリ職、技術職、事務職など、専門性の高い職種に特化した求人情報を多数掲載しています。
雇用形態や詳細条件での求人検索もできるのであなたにぴったりな職場が見つかります!
【職種から求人・転職情報を探す】