本日のお悩み:介護施設でICTの導入を進めたい
導入時の準備や補助金などについて教えていただきたいです。
介護施設のICT導入|失敗しない進め方とは?
■執筆者/専門家
『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。
■回答
一方で、現場の管理者の方からは、「ICTを導入したいが、何から始めればいいのかわからない」「導入しても現場で使われなくなるのではないか」といった相談を受けることが少なくありません。
実際、ICT導入がうまくいく施設と、そうでない施設があります。その違いは機器の性能だけではなく、導入までの準備や進め方にあると考えています。
今回は、介護施設でICT導入を進める際の基本的な考え方と、補助金の活用方法、生産性向上との関係について、現場の経験も踏まえながら整理します。
ICT導入でよくある3つの失敗
■1.目的があいまいなまま、機器を導入してしまう
■2.トライアルをせずに機器を選定してしまう
■3.運用ルールを決めないまま導入してしまう
まずは現場の課題を整理することが、ICT導入の最初のステップ
2.介護記録の入力に時間がかかる
3.職員間の情報共有に時間がかかる
4.転倒リスクの高い利用者の見守りが難しい
5.排泄介助のタイミングが読みづらい
2.介護記録ソフト
3.インカム
4.排泄予測センサー
5.移乗支援機器
課題の見える化を行ったうえで、どのメーカーのどの機種にするかを検討しましょう。
複数の機器をトライアルする
例えば、見守りセンサーにもさまざまなタイプがあります。
・マットセンサー型
・カメラ型
・AI解析型
ICTは導入することが目的ではなく、現場で使われてこそ意味があります。だからこそ、職員が使いやすいと感じる機器を選ぶことが重要なのです。
機器選定の基準を決める
評価基準を決める際の参考として、チェックすべきポイントもお伝えします。
・誤作動の少なさ
・既存システムとの連携
・導入コスト
・保守体制
・職員の満足度
運用ルールを事前に決めておく
・夜間巡視との役割分担(巡視をすべてセンサーに任せるのではなく、必要に応じてカメラや現場での確認を組み合わせるなど)
・記録への反映方法
・情報共有の方法
補助金を活用する
ここでは、代表的な補助制度を紹介しておきましょう。
■1.国の補助金
・ICT導入支援事業
■2.都道府県の補助金
なお、行政以外にも、福祉機器導入に活用できる助成制度があります。
生産性向上の取り組みとの関係
厚生労働省が公表した「介護サービス事業における生産性向上ガイドライン」でも、次のようなプロセスが示されています。
2.業務の整理
3.改善策の検討
4.ICT導入
5.効果検証
そのため、ICT導入を単なる機器導入としてではなく、業務改善や働きやすい職場づくりの一環として捉えることが重要です。
例えば、補助金を活用できるから導入する、見守りセンサーが流行っているから取り入れる、加算を取得するから導入するというのは、本来の目的から外れています。そうではなく、現場課題の解消を目指した取り組みの結果として、補助金の活用や加算の取得につながる場合がある、という整理が望ましいと考えます。
効果測定を行う
例えば、以下のような項目を評価することで、導入効果を客観的に把握することができます。
・記録時間の短縮
・転倒件数の変化
・職員の業務負担(アンケート式)
・超過勤務の減少率
・ご利用者への直接介助時間の増加
あわせて、職員の負担感やケアの質の変化などを確認しながら運用を調整します。3カ月以上取り組んだ後に、再度同様のアンケートや調査を実施するようにもしています。その際、可能な限り同一人物で実施するのもポイントの一つです。
ICT導入チェックリスト
□現場の課題が整理されている
□導入目的が明確になっている
□複数メーカーのトライアルを行っている
□機器選定の評価基準がある
□運用ルールが決まっている
□補助金の情報収集を行っている
□生産性向上の視点で検討している
□導入後の効果測定を行う計画がある
ICT導入によって得られる8つのメリット
最後に、ICT導入によって得られる主なメリットを整理します。
2.職員の負担軽減
3.ケアの質の向上
4.離職防止・定着促進
5.事故予防・リスクマネジメントの強化
6.情報共有のスピード向上
7.データを活用した科学的介護
8.スタッフのモチベーションの向上
まとめ
この記事が、ご質問者様やお読みいただいた皆様の働きやすさと、生活されているご利用者の生活の質の向上につながれば幸いです。
■あわせて読みたい記事
介護職員が働きやすい職場環境づくりで内閣総理大臣表彰!現場改革と成功の秘訣とは? | ささえるラボ
https://mynavi-iryofukushi.jp/media/articles/1358働き方改革は介護業界に限らず、近年多くの業界で注目されています。今回は、介護職員の働きやすい職場環境づくりで内閣総理大臣表彰を受賞された特別養護老人ホームもくせいの施設長である伊藤さんに、実際の取り組みや成功のポイントを詳しく解説いただきました。【執筆者/専門家:伊藤 浩一】

・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士