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介護施設のICT導入ガイド|準備・補助金・失敗しない進め方を徹底解説

介護施設のICT導入ガイド|準備・補助金・失敗しない進め方を徹底解説

介護施設でICT導入を成功させるための基本ステップを解説。現場の課題整理から機器選定、運用設計、補助金活用、効果測定まで、失敗しない導入のポイントを専門家がわかりやすく紹介します。【執筆者/専門家:後藤 晴紀】


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本日のお悩み:介護施設でICTの導入を進めたい

介護施設でICTの導入を進めたいと思っています。
導入時の準備や補助金などについて教えていただきたいです。

介護施設のICT導入|失敗しない進め方とは?

執筆者/専門家

後藤 晴紀

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/9

『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。

介護現場のICT化を模索している担当者の方からのお悩みです。現場目線での業務改善に精通されている後藤 晴紀さんにご回答いただきました。単なる機器の紹介に留まらない、現場の課題整理から始める「失敗しないためのチェックリスト」を提示していただきます。

回答

慢性的な人材不足が続くなか、介護現場ではICTや介護ロボットを活用した業務効率化、ケアの質向上が求められるようになっています。

一方で、現場の管理者の方からは、「ICTを導入したいが、何から始めればいいのかわからない」「導入しても現場で使われなくなるのではないか」といった相談を受けることが少なくありません。

実際、ICT導入がうまくいく施設と、そうでない施設があります。その違いは機器の性能だけではなく、導入までの準備や進め方にあると考えています。

今回は、介護施設でICT導入を進める際の基本的な考え方と、補助金の活用方法、生産性向上との関係について、現場の経験も踏まえながら整理します。

ICT導入でよくある3つの失敗

はじめに、ICT導入の現場でよく見られる失敗について見ていきましょう。

1.目的があいまいなまま、機器を導入してしまう

「ICTを入れれば業務が効率化するのではないか」という期待だけで機器を導入すると、現場の課題に適合せず、結果として使われなくなってしまうことがあります。ICTは万能ではないため、どの業務を改善したいのかを明確にすることが大切です。

2.トライアルをせずに機器を選定してしまう

ICT機器はメーカーによって操作性や特徴が大きく異なります。カタログや説明だけで導入を決めてしまうと、「実際の業務では使いづらかった」ということになりかねません。可能であれば、複数のメーカーの機器をトライアルし、実際に現場で試してみることが重要です。

3.運用ルールを決めないまま導入してしまう

ICTを導入する際、「誰が対応するのか」や「どのように使うのか」といったルールがあいまいだと、思ったように活用されず、結局以前のやり方に戻ってしまうことがあります。これまでの方法の方が楽だと感じる場合があります。そのため、ICT導入では機器そのものよりも、運用設計のほうが重要と言えます。

まずは現場の課題を整理することが、ICT導入の最初のステップ

介護施設では、次のような課題がよく見られます。
1.夜間の巡視負担が大きい
2.介護記録の入力に時間がかかる
3.職員間の情報共有に時間がかかる
4.転倒リスクの高い利用者の見守りが難しい
5.排泄介助のタイミングが読みづらい

こうした課題を整理することで、導入すべきICT機器が見えてきます。それぞれの課題に応じた機器の一例は次のとおりです。
1.見守りセンサー
2.介護記録ソフト
3.インカム
4.排泄予測センサー
5.移乗支援機器

ICT導入は「機器選び」から始めるのではなく、課題の見える化から始めることが重要です。
課題の見える化を行ったうえで、どのメーカーのどの機種にするかを検討しましょう。

複数の機器をトライアルする

ICT機器には多くの種類があるため、導入を検討する際は、できるだけ複数メーカーの機器を試してみることを推奨します。

例えば、見守りセンサーにもさまざまなタイプがあります。

ベッドセンサー型
マットセンサー型
カメラ型
AI解析型

私の施設でも、新しい機器を導入する際にはトライアル期間を設け、実際に現場の職員に使ってもらいながら意見を集めています。すると、「操作がシンプルで使いやすい」「アラートが多すぎて対応が大変」など、カタログだけではわからない現場の姿が見えてきます。

ICTは導入することが目的ではなく、現場で使われてこそ意味があります。だからこそ、職員が使いやすいと感じる機器を選ぶことが重要なのです。

機器選定の基準を決める

トライアルを行う際には、評価基準を決めておくことも重要です。
評価基準を決める際の参考として、チェックすべきポイントもお伝えします。

操作のしやすさ
誤作動の少なさ
既存システムとの連携
導入コスト
保守体制
職員の満足度

評価表を作成して職員の意見を集約すれば、客観的な判断で機器を選定できます。

運用ルールを事前に決めておく

ICT導入では、運用ルールの設計が非常に重要になります。見守りセンサーの場合なら、以下のことを事前に整理しておくとよいでしょう。
アラートが鳴った際の対応者
夜間巡視との役割分担(巡視をすべてセンサーに任せるのではなく、必要に応じてカメラや現場での確認を組み合わせるなど)
記録への反映方法
情報共有の方法

ICTは導入するだけでは効果が生まれません。どのように使うのかを具体的に設計することが、成功のポイントになります。

補助金を活用する

ICTや介護ロボットは決して安価なものではありません。特にご利用者や職員の数が多ければそれだけ導入コストが跳ね上がっていきます。そのため、多くの施設では補助金を活用しながら導入を進めています。

ここでは、代表的な補助制度を紹介しておきましょう。

1.国の補助金

・介護ロボット導入支援事業
・ICT導入支援事業

2.都道府県の補助金

各自治体が独自に実施しているICT導入支援があるので、公式ホームページなどで確認してください。補助金は年度ごとに条件や対象機器が変わるため、対象機器・補助率・申請スケジュールなどについて、早めに確認しておくことが重要です。

なお、行政以外にも、福祉機器導入に活用できる助成制度があります。


生産性向上の取り組みとの関係

近年、ICT導入は、生産性向上における重要なテーマになっています。
厚生労働省が公表した「介護サービス事業における生産性向上ガイドライン」でも、次のようなプロセスが示されています。

1.課題の見える化
2.業務の整理
3.改善策の検討
4.ICT導入
5.効果検証

また、処遇改善加算の要件でも、生産性向上の取り組みを求められる場面が増えています。
そのため、ICT導入を単なる機器導入としてではなく、業務改善や働きやすい職場づくりの一環として捉えることが重要です。

例えば、補助金を活用できるから導入する、見守りセンサーが流行っているから取り入れる、加算を取得するから導入するというのは、本来の目的から外れています。そうではなく、現場課題の解消を目指した取り組みの結果として、補助金の活用や加算の取得につながる場合がある、という整理が望ましいと考えます。

効果測定を行う

ICT導入では、導入後の効果を測定することも大切です。効果測定を行うためには、定性化(数値化できない性質・印象・理由などを、言葉やカテゴリで整理すること)ではなく、定量化(物事や現象を数値やデータとして客観的に表現すること)できる指標で評価する必要があります。

例えば、以下のような項目を評価することで、導入効果を客観的に把握することができます。

夜間巡視回数の変化
記録時間の短縮
転倒件数の変化
職員の業務負担(アンケート式)
超過勤務の減少率
ご利用者への直接介助時間の増加

私たちの施設でも、ICTや介護ロボットの導入を進める際は、まず取組活動前の指標となるアンケートや調査を行います。

あわせて、職員の負担感やケアの質の変化などを確認しながら運用を調整します。3カ月以上取り組んだ後に、再度同様のアンケートや調査を実施するようにもしています。その際、可能な限り同一人物で実施するのもポイントの一つです。

ICT導入チェックリスト

ICT導入を検討する際のチェックポイントを整理しておきますので、こちらもご活用ください。
ICT導入チェックリスト

現場の課題が整理されている

導入目的が明確になっている

複数メーカーのトライアルを行っている

機器選定の評価基準がある

運用ルールが決まっている

補助金の情報収集を行っている

生産性向上の視点で検討している

導入後の効果測定を行う計画がある

ICT導入によって得られる8つのメリット

ICTを導入する目的は単に機器を増やすことではなく、現場の働き方やケアの質をより良いものにしていくことにあります。

最後に、ICT導入によって得られる主なメリットを整理します。

1.直接ケア時間の増加
2.職員の負担軽減
3.ケアの質の向上
4.離職防止・定着促進
5.事故予防・リスクマネジメントの強化
6.情報共有のスピード向上
7.データを活用した科学的介護
8.スタッフのモチベーションの向上

まとめ

ICTは単なる機器導入ではなく、介護の質を高め、職員の働きやすさを支えるしくみづくりでもあります。だからこそ、現場の職員の声を大切にしながら段階的に進めていくことが、ICT導入を成功させるポイントと考えます。

この記事が、ご質問者様やお読みいただいた皆様の働きやすさと、生活されているご利用者の生活の質の向上につながれば幸いです。

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この記事のライター

・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士

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