内閣総理大臣表彰受賞の理由は「夜勤業務の改善」
■執筆者/専門家
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)
夜勤業務の改善において、特に注力したポイントは下記の通りです。
※詳細:ささえるラボ 介護職員が働きやすい職場環境づくりで内閣総理大臣表彰!現場改革と成功の秘訣とは?
(困っていること、時間を取られている業務など)を見える化
・「夜勤が大変」という声に着目し、どういったところが大変なのか、何の業務に
何分かかっているのかをタイムスタディ(10分単位のオペレーション分析)で棚卸し
・「眠りSCAN(スキャン)※」というテクノロジーを活用して、時間がかかっていた
巡視時間の削減を実現
※ベッドに設置したセンサーにより体動(寝返り、呼吸、心拍など)を測定し、睡眠状態を把握するシステムのこと。
■なぜ夜勤改革から始めたのか
また、そうした特徴を利用すれば、「まずは夜勤で成功体験を積み上げて、そこから日中業務へ展開する」という流れをつくりやすくなります。つまり、「取り組みやすいところから取り組むこと」で、生産性向上=業務改善を実現していったのです。
夜勤改善の成功を活かした「日中の業務改善」
この記事を読んでいる方の中には、「なぜそんな配置に?」と思う方もいるかもしれません。しかし、現場の職員は気づいていませんでした。
理由はとてもシンプルで、「今までずっとそうだったから」 です。
■タイムスタディで浮かび上がった人員配置の問題
そのため、なぜそうした体制になったのかを分析したのですが、見えてきたのは「介助に時間がかかる入居者がいたこと」や、「誤薬などの事故防止を意識したこと」などの細かな要因ばかり。結局、明確な理由は誰も説明できませんでした。
■話し合いと役割整理による業務フロー再構築
具体的には、昼食介助に集中する職員の適正人数を再設定し、他の職員は休憩に入る。休憩後は、居室誘導や記録業務、レクリエーション準備など、昼食介助の次に時間を要する業務を担当する。このような流れが作れるよう調整を進めました。
さらに、直接介助(直接利用者と接する介助=入浴・食事・排泄等介助・コミュニケーションなど)と、間接業務(直接利用者さんと接しない業務=記録・巡視・配膳準備・片付け・掃除など)を切り分け、常勤・非常勤・介護助手の役割分担を明確化しました。
■見直し後の変化
■生まれた50分が、ケアの質を変える
■【成果1】余暇時間の充実化
・グループ・個別レクリエーション:週1回 → 毎日実施
このような余暇時間の充実は、眠りの質にも好影響を与えます。たとえば、Aさんの眠りSCANを活用したデータ検証では、次のような変化が確認できました。
■【成果2】職員のモチベーション向上
・睡眠効率:55% → 72%へ改善
・夜間覚醒頻度の低下
自施設での成功体験を、法人内の施設に横展開
生産性の向上に取り組む前は、私自身も「デイサービスは忙しいから仕方がない」と考えていたのですが、「なぜ17時30分に帰れないのか」を分析してみたところ、具体的な課題が見えてきました。
・掃除が終わらない
・翌日の利用者への電話連絡が終わらない
■出発時間の見直しが生産性向上の鍵に
・渋滞時間帯を避けることで自宅への到着が早くなること
・職員の労働時間を守る必要があること
テクノロジーと役割分担で、残業減少へ
・時間外勤務削減:1人あたり月約2.8時間
給食部門へも横展開を
これらは、特養での生産性向上の土台があったからこそ、部門間の対話がスムーズに進んだ事例です。
まとめ:「当たり前の習慣」を見直すことが職場改善に
すべての時間外労働をゼロにするのは簡単ではありませんが、「これまで当たり前だった慣習」を1つずつ見直し、現場全体で少しずつ改善を進めていきたいですね。
■現場同士が学び合う仕組みづくり
微力ではありますが、今後も介護サービスの質向上に向けて、現場発の挑戦を続けていきます。
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茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)