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面会を止めないために|介護施設が知っておきたい感染対策の考え方

面会を止めないために|介護施設が知っておきたい感染対策の考え方

感染症が流行する季節でも面会を継続するために、介護施設ができる具体的な感染対策と、ご家族に協力してもらうためのポイントを専門家がわかりやすく解説します。【執筆者/専門家:大関 美里】


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本日のお悩み:感染症の時期でも面会を継続したい!

感染症が流行っている季節ですが、施設での面会は継続したいと思っています。施設側ができる工夫や、ご家族に知っておいてほしいことなどを教えていただきたいです。

「会わせたい」と「守りたい」の間で悩む介護現場

■執筆者/専門家

大関 美里

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/13

社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士 介護現場の職員の後、祖父の在宅介護での後悔と、自身の介護うつ経験から、そのきっかけになった排泄の支援を追求すべくおむつメーカーへ転職。 1000人以上の方のおむつ交換に触れ、介護する側もされる側も双方が「シッカリ出して、スッキリ生きる」ことが、より良い人生に繋がる。気持ち良く「出す」ことをサポートすることで良い循環が生まれることを実感する。

ご質問ありがとうございます。感染症が流行する季節になると、「面会を続けたい」という思いと、「感染を防がなければならない」という思いが入り混じり、頭を悩ませる施設も多いと思います。インフルエンザや新型コロナウイルスなどが重なる時期には、「どこまで対策をすればよいのか」「面会を続けて本当に大丈夫なのか」と不安になりますよね。

私自身、介護現場に関わる中で、「面会を制限すると利用者の元気がなくなる」「ご家族の思いも大切にしたい」という声を数多く聞いてきました。感染対策と利用者の生活、そのどちらも守りたいという思いは、現場に立つ方に共通しているのではないでしょうか。

■安心とつながりを両立させる工夫が大切

とはいえ、感染対策は「面会をする・しない」という単純な二択ではありません。リスクを正しく理解し、できる工夫を重ねながら、安心とつながりを両立させていくことが大切です。

今回は、感染症が流行する季節でも面会を継続するために、施設側ができる工夫とご家族に知っておいてほしいポイントを、現場の視点と根拠をもとにお伝えします。

介護現場だからこそできる工夫と、ご家族と一緒につくる安心

冬から春にかけては、感染症が流行しやすい季節ですね。介護施設では「感染リスクをいかに下げるか」が重要になりますが、それにあわせて、利用者の心身の健康やQOL(生活の質)を守る視点も欠かせません。

厚生労働省は「社会福祉施設等における面会等の実施にあたっての留意点について」において、対面での面会制限が利用者の気分の落ち込みや認知機能に影響する可能性を示し、感染対策を講じたうえで可能な限り対面面会を継続することを推奨しています。
※参照:厚生労働省 社会福祉施設等における面会等の実施にあたっての留意点について

■感染対策は積み重ねが大切

ただし、感染対策を講じたからといって、リスクがゼロになることはありません。感染症は目に見えず、流行状況やウイルスの性質も常に変化します。だからこそ、完璧を目指すのではなく、リスクを下げる工夫を現場全体で積み重ねていく姿勢が大切です。

施設側でできる具体的な感染対策

ここからは、具体的な感染対策について紹介していきましょう。主なポイントは5つです。

■1.スタンダード・プリコーション(標準予防策)の徹底

感染対策の基本となるのが、スタンダード・プリコーションです。これは「すべての人が感染している可能性がある」という前提に立ったうえで、日常的に行う基本的な予防策を指します。

厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き(第3版)」※では、次のような項目が示されています。
※参照:厚生労働省 介護現場における感染対策の手引き(第3版)
・面会者、職員、利用者すべてにおける手洗い・手指消毒
・マスクの着用による飛沫感染対策
・ドアノブや机など、接触頻度の高い場所の消毒
・職員自身の体調管理
これらは特別な対策ではなく、日々のケアの延長線上にある行動です。

■2.面会前の事前チェックと調整

面会を安全に続けるためには、「始まる前」の確認がとても重要です。厚生労働省が示した「社会福祉施設等における面会等の実施にあたっての留意点について」では、面会者が以下の条件を満たすことが原則とされています。

現場では、チェックリスト形式で次のような点を確認すると、対応がスムーズになるでしょう。
※参照:厚生労働省 社会福祉施設等における面会等の実施にあたっての留意点について
・発熱が認められないこと
・のどの痛み、せき、倦怠感などの症状がないこと
・濃厚接触者でないこと
・同居家族に体調不良者がいないこと
・過去2週間以内に感染者との接触がないこと
これは「断る」ために行う確認ではなく、面会を長く続けるために必要な判断です。条件を満たさない場合には、無理に実施せず別日程を提案しましょう。

■3.面会場所・環境の工夫

同じ面会でも、環境によってリスクは大きく変わります。「高齢者施設における面会の実施に関する取組について」では、面会時の留意点として以下が示されています。
※参照:厚生労働省 高齢者施設における面会の実施に関する取組について
・十分な換気(季節を問わず窓を開ける)
・できるだけ少人数で
・大声での会話や飲食は控える
・距離を保てる配置
「どうすればリスクを下げられるか」を考えることで、環境対策における選択肢はさらに広がるでしょう。

■4.予約制・短時間面会の活用

短時間・予約制の面会は、感染対策と適切な施設運営の両立に有効です。面会が集中しやすい時間帯を避けることで、職員の動線調整や消毒作業も計画的に行えるため、施設全体の混雑防止につながります。

■5.職員研修とマニュアルの整備

感染対策は、個人の頑張りだけでは成り立ちません。だからこそ重要なのが、指針・マニュアルの整備と職員研修です。「介護現場における感染対策の手引き」では、全職員が同じ感染知識を持って予防行動できるよう、定期的な研修の実施が求められています。

感染の三原則から考える、面会時の感染対策

感染対策を整理する際、現場でとても役立つ考え方があります。それが「感染の三原則」です。

感染症は、1.感染源、2.感染経路、3.感受性のある人の3つがそろったときに感染します。つまり、このどれか1つでも断ち切れれば、感染リスクは大きく下げられるということです。

■面会時に当てはめる「感染の三原則」

3つの要素を介護施設の面会場面に当てはめてみましょう。
1.体調不良時は面会を控える → 感染源を持ち込まない
2.マスクの着用や換気を徹底する → 感染経路を断つ
3.利用者の体調変化をいち早く察知する → 重症化や拡大を防ぐ
このように、日頃行っている対策の一つひとつが、三原則に沿った行動であることがわかります。「介護現場における感染症対策の手引き」にも、感染成立の3つの要因を理解し、それぞれに対応した対策を講じることの重要性が記されています。

感染経路別に考える、面会時の予防策

感染経路は主に「飛沫感染」「接触感染」「空気感染(エアロゾル)」に分けられます。この中で、面会時に特に意識したいのは、飛沫感染と接触感染です。

■1.飛沫感染への対策

飛沫感染は、せきやくしゃみ、会話の際に飛び散る“しぶき”を介して起こります。「介護現場における感染症対策の手引き」では、飛沫感染予防策として以下が示されていますので、こちらも確認しましょう。
・マスクの着用
・1~2メートル程度の距離を保つ
・大声での会話を控える
・十分な換気を行う

■2.接触感染への対策

接触感染は、ウイルスが付着した手指や物品を介して起こります。同手引きでは、接触感染予防策として以下が重要とされています。
・面会前後の手洗いおよび手指消毒
・ドアノブ、机、椅子などの環境消毒
・「顔を触らない」という意識を持つ(無意識に顔を触る人が多いため)
特に高齢者施設では、「多くの人が頻繁に触れる場所」を意識した対策が、感染拡大防止につながります。

また、排泄ケアの汚染物の処理方法なども、この機会にきちんと確認してください。

ご家族に知っておいてほしいこと

感染対策には、ご家族の協力も不可欠です。まずは、「面会は利用者のQOLに直結する」「ご家族の協力が、施設全体を守る」という2つのことを知ってもらいましょう。

■1.面会は利用者のQOLに直結する

「高齢者施設における面会の実施に関する取組について」では、東北大学大学院の小坂健先生が、対面面会によって「家族に会える期待から利用者の気分が高まる」「物忘れが激しくなっていた利用者が、わが子を認識できるようになった」などの好影響が期待されると述べています。

利用者にとっての面会は、単なる「訪問」ではなく、「自分は大切にされていると感じられる時間」でもあるのです。

■2.ご家族の協力が、施設全体を守る

面会者の行動の1つひとつが、施設全体の安全につながります。体調確認、手洗い、マスク着用、面会後の体調変化の共有などは、感染予防の大きな力になるでしょう。施設とご家族は、管理する側・される側ではなく、利用者の安全を一緒に守るパートナーなのです。

最後に:「難しい対策」より、「続けられる対策」を

感染対策というと、特別な装備や厳格なルールを想像しがちですが、実際に現場を守るのは、毎日続けられる基本行動です。感染の三原則や感染経路を理解すると、「なぜこの行動が必要なのか」が明確になり、職員・ご家族双方の納得感も高まるでしょう。

原因がすべてわからなくても、できる予防を積み重ねることが大事です。それは、ジョン・スノウが示した「原因が完全に特定できなくても、予防行動は取れる」という疫学の考え方にもつながります。介護現場だからこそ、この視点を大切にしながら、面会という大切な時間を守っていくことが求められるのです。

■感染対策は「つながり」を守るためのもの

感染症対策は、人を遠ざけるためのものではなく、安心して人とつながり続けるための土台です。だからこそ、現場で悩みながら、面会を続けようと工夫する姿勢は、決して間違いではありません。科学的根拠に基づいて、できる予防を積み重ねながら、これからも「会える介護」を守っていきましょう。応援しています!

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この記事のライター

社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士

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