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介護施設の食費が+100円へ|背景・メリット・デメリットを社労士が徹底解説

介護施設の食費が+100円へ|背景・メリット・デメリットを社労士が徹底解説

2026年8月から介護施設の食費基準額が1日+100円に。値上げの理由、制度の仕組み、施設・利用者双方のメリット・デメリットを介護業界特化型社労士が詳しく解説します。【執筆者/専門家:山本 武尊】


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本日のお悩み:2026年8月からの食費の基準額改定について

2026年8月から食費の基準額が+100円になると聞きました。この仕組みや値上げの背景、施設側・利用者さん側それぞれのメリット・デメリットなどを教えてください。

なぜ今、介護業界で「食費+100円」が注目されているのか

執筆者/専門家

山本 武尊

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/23

おかげさま社労士事務所 代表 元地域包括支援センター センター長 社会保険労務士、社会福祉士・主任介護支援専門員・介護福祉経営士1級・ ファイナンシャルプランナー2級(AFP)・簿記3級

こんにちは。介護業界特化型の社会保険労務士、山本武尊と申します。

今年のはじめから、現場の経営者様や施設長様、そしてご家族様から、2026年(令和8年)の制度改正に関する相談が増えてきました。特にみなさんが敏感になられているのが「お金」に直結する部分、すなわち「食費基準額の引き上げ(1日あたり100円)」についてです。

「また値上げか……」とため息をつきたくなる気持ちは、痛いほどわかります。しかし、この+100円の背景には、介護業界が直面している「待ったなし」の現実があります。

今回は、2026年8月から予定されている「食費の基準費用額」の引き上げについて、その仕組みや背景、施設・利用者双方にとってのメリット・デメリットを、私の視点を交えて徹底解説します。

そもそも何が変わるのか?食費基準額改定の全体像

まず、今回のニュースの核心部分を整理しましょう。ポイントとなるのは、「厚生労働省の社会保障審議会(介護給付費分科会)での議論を経て、2026年8月から介護保険施設(特養、老健、介護医療院など)における食費の基準費用額を、日額で100円程度引き上げる方向性が固まった」ということです。

「基準費用額」とは?

基準費用額というのは、「施設で食事を提供する場合、平均的にこれくらいのコストがかかるだろう」と国が定めた標準的な金額のことです。


現在の基準費用額(2024年度〜)は、施設の種類やケアの内容によって異なりますが、おおむね日額1,445円(朝・昼・夕の3食分)とされています。そして、2026年8月からはこれに+100円され、約1,545円になる見込みです。

「食費+100円」は誰にどんな影響があるのか

この変更は、以下の2つの層に影響を与えます。

1.補足給付(特定入所者介護サービス費)を受けている方

所得が低い方(第1~第3段階)は、食費の自己負担額が軽減されています。基準額が上がると、この軽減の枠組み(負担限度額)も見直される可能性が高く、結果として自己負担額が増えることになります。

2.全額自己負担の方(第4段階)

基準額が上がれば、施設側はそれを根拠に設定料金(契約金額)を見直すことになるでしょう。つまり、ダイレクトに値上げとなるわけです。

なぜ今「+100円」なのか?値上げが避けられない理由

なぜこのタイミングで値上げなのか。その答えはシンプルで、「物価高騰」と「現場の限界」が主な理由です。

1.止まらない食材費・光熱費の高騰

ここ数年、誰もが実感しているように、食材の価格が跳ね上がっています。野菜、肉、魚、調味料……。すべてが値上がりしました。さらに、食事を作るためのガス代・電気代(光熱水費)の高騰も、施設の経営を圧迫しています。

2.基準額と実勢価格の乖離

これまで国が定めていた「1,445円」という基準は、もはや実勢価格とかけ離れています。そのため、多くの施設では基準額内にコストを収めようと、以下のような涙ぐましい努力をしてきました。
・安価な食材への切り替え
・品数の削減
・調理スタッフの人件費抑制
・施設側の持ち出し(赤字補填)

「施設側の持ち出し」が引き起こしていた本当の問題

特に問題なのが、最後の「持ち出し」です。本来、食事サービスは独立採算であるべきですが、多くの特養や老健が、介護報酬(本体報酬)で得た利益を食費の赤字補填に回しているのが実情です。そして、そのやり方が経営を圧迫し、結果として「介護職員の賃上げ原資」を食い潰しています。

今回の+100円は、こうした「隠れた赤字」を解消し、物価上昇に追いつくための正常化措置と言えます。

施設側・利用者側のメリット・デメリット

基準費用額の変更がもたらす影響を、施設側・利用者側の視点から整理します。

施設側(事業者)にとっての影響

■メリット

1.収支の改善:
食材費高騰による「持ち出し」が減り、健全な経営に近づきます。

2.品質の維持・向上:
限界を超えたコストカットがなくなり、栄養バランスや彩りのある食事を提供し続けられます。

3.人材確保への波及:
食費部門の赤字が減れば、その分を介護職員や調理スタッフの処遇改善に回す余地が生まれます。

■デメリット

1.説明責任の増大:
利用者様やご家族への料金改定の説明に多大な労力を要します。

2.入居控えのリスク:
地域によっては、料金上昇により選ばれにくい施設になる懸念があります。

3.事務負担の増加:
契約書の再締結や重要事項説明書の変更など、2026年8月に向けた事務作業が膨大になります。

利用者さん・ご家族にとっての影響

■メリット

1.食事の質が守られる:
極端なコストカットによる「質素すぎる食事」を回避でき、生活の楽しみである「食」の質が守られます。

2.施設の存続:
施設が経営難で倒産・撤退するリスクが減り、長く安心して住み続けられます。

■デメリット

1.経済的負担の増加:
月額で約3,000円(100円×30日)の負担増は、年金暮らしの世帯には大きな痛手です。

2.補足給付への不安:
低所得者層の場合、どこまで公費でカバーされるか不透明な部分があります。また、制度が複雑化して理解しにくくなります。

専門家の視点-社労士として現場を見てきた立場から

ここからは、専門家としての個人的かつ専門的な見解をお伝えします。

「+100円」は高いか、安いか?

月額3,000円の負担増。ご家族の家計を考えれば、決して軽い金額ではありません。しかし、あえて申し上げます。「この値上げは、介護の質を守るための防波堤である」と。

食事の質が落ちると、施設全体に何が起きるのか

私が多くの施設を見てきて感じるのは、「食事の質が落ちると、施設の空気そのものが沈む」という事実です。

入居者様にとって、一日の最大の楽しみは食事です。体が思うように動かなくなっても、おいしいものを食べる喜びは残ります。その食事を、コストのために「ただの栄養補給」にしてしまっては、介護施設としての尊厳が失われかねません。

「見えないコスト」への理解

また、この100円には「人への投資」という意味合いも含まれていると捉えるべきです。調理員さんが早朝から出勤し、嚥下機能に合わせた刻み食やミキサー食を作る手間。あるいは、温かいものを温かいうちに配膳する介護職員の手間。食費が適正化されなければ、施設は人件費を削るしかなく、こうした手間をかけにくくなります。

つまり、食費の値上げを拒むことは、巡り巡って「ケアの質(職員の余裕)を奪うこと」につながってしまうのです。

施設経営者様への提言

経営者様には、この+100円を単なる「コスト転嫁」で終わらせないでいただきたい。料金改定の際は、「値上げしました」と通知一本で済ますのではなく、「いただいた100円で、どんな良い変化を起こすか」を伝えてください。「地元の旬の食材を増やしました」でも、「行事食を豪華にしました」でも構いません。

そうしたプラスアルファの還元があって初めて、ご家族は納得してくださいます。逆に、納得感のない値上げは信頼関係を壊しかねません。

まとめ|2026年8月に向けて今から準備すべきこと

「+100円」を意味ある改定にするために

2026年8月の「食費基準額+100円」は、物価高と人手不足にあえぐ介護業界において、避けては通れない道です。だからこそ、施設側は値上げを恐れず、その分「質の高いケアと食事」で返す覚悟を持つことが大事です。

そして、料金改定に向けた説明準備を今から始めてください。利用者側にとって負担増は痛手ですが、丁寧に準備を進めて、「安心安全な食事とケアを受けるための必要経費」としてご理解いただきましょう。

食事は、介護現場の「尊厳」そのもの

介護は、支える側と支えられる側の「分かち合い」で成り立っています。特に食事は、介護従事者と利用者様にとって、“介護現場の尊厳そのもの”と言えるかもしれません。

この改定が、双方にメリットをもたらし、持続可能な介護の未来につながることを、一人の社労士として切に願います。今のうちから、2026年の夏を見据えて準備を進めていきましょう。

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この記事のライター

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