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日本版DBSで児童発達支援・放課後等デイサービスの現場はどう変わる?

日本版DBSで児童発達支援・放課後等デイサービスの現場はどう変わる?

「こども性暴力防止法」(日本版DBS)に関するご相談について、介護業界特化型の社会保険労務士として活動する山本武尊さんよりご回答いただきました。児童発達支援・放課後等デイサービスの現場への影響について、詳しく解説します。【執筆者/専門家:山本 武尊】


目次

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本日のお悩み:日本版DBSによる児童発達支援や放課後等デイサービスの影響は?

日本版DBSは学校や保育所だけでなく、児童発達支援や放課後等デイサービスなども対象になると聞きました。対象施設や現場で働く職員には、具体的にどのような影響があるのでしょうか?

日本版DBS(こども性暴力防止法)とは?

執筆者/専門家

山本 武尊

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/23

おかげさま社労士事務所 代表 元地域包括支援センター センター長 社会保険労務士、社会福祉士・主任介護支援専門員・介護福祉経営士1級・ ファイナンシャルプランナー2級(AFP)・簿記3級

2026年12月から施行される新制度

日本版DBSと呼ばれている制度の根拠となるのは、「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」、いわゆる「こども性暴力防止法」です。

この法律は、性暴力から子どもたちの安全を守るためのもので、2024年6月に成立・公布され、2026年12月25日に施行されます。

犯罪歴確認だけではない事業者の義務

日本版DBSは、子どもと接する仕事に就く人について、一定の性犯罪前科の有無を確認するしくみとして注目されています。しかし、法律が事業者に求めているのは、犯罪歴の確認だけではありません。

事業者には、性暴力を未然に防ぐための職場環境の整備や従事者への研修、子どもの日常的な見守り、相談窓口の設置、疑いが生じた場合の調査・保護・支援、確認情報の管理などを、総合的に行うことが求められます。

したがって、児童発達支援や放課後等デイサービスでは、採用時に確認書類を追加するだけでなく、「人事労務管理と日々の支援体制の双方を見直す法改正」として対応する必要があります。

児童発達支援・放課後等デイサービスは義務対象

義務対象となる障害児福祉サービス

「こども性暴力防止法」では、学校や認可保育所、児童福祉施設など法律により対応が義務付けられる事業者と、学習塾やスポーツクラブなど申請により国の認定を受ける事業者に区分されています。

公立・民間を問わず対応が必要

障害児福祉の分野では、指定障害児通所支援事業として行われる児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援が義務対象です。加えて、指定障害児入所施設なども対象となります。該当する指定事業者は、公立・民間の区別や法人の規模にかかわらず、法令に基づいて対応しなければなりません。

まずは自法人のサービス区分を確認しよう

一方、指定障害児通所支援事業に該当しない障害児通所支援事業などは、認定を受けることで制度の対象となります。「障害福祉サービスを行っている事業所が、すべて同じ扱いになる」と考えるのではなく、「自法人が運営するサービスの法的位置付けを確認することが出発点になる」と理解しておきましょう。

どの職員が確認対象になるのか

管理者・児童指導員・保育士などの取り扱い

児童発達支援や放課後等デイサービスでは、職種名だけで一律に判断するのではなく、子どもとの接触状況や業務内容などを踏まえて、確認対象となる従事者を判断します。
・管理者や児童指導員
・保育士

などは、業務内容によって確認対象となることがあります。 放課後等デイサービスでも、
・管理者
・児童指導員
・保育士
・児童発達支援管理責任者
・機能訓練担当職員
・看護職員
・指導員

などが確認対象です。

「支配性」「継続性」「閉鎖性」が判断基準

それに対して、事務職員、調理員、嘱託医、送迎バスの運転手などは、職種名だけで一律に対象かどうかが決まるわけではありません。これらの職種は、
子どもに対して優越的な立場に立つ機会がある「支配性」
業務として反復・継続して接する「継続性」
第三者の目が届きにくい状況で接する可能性がある「閉鎖性」

という3つの要件を、実際の業務内容に照らして判断されます。

例えば、送迎時に必ず支援職員が同乗し、運転手が子どもと1対1にならない運用であれば、対象外となる余地があります。反対に、運転手だけで日常的に送迎し、車内で子どもと1対1になる場合は、確認対象となる可能性が高まります。

こうしたことから、対象者をリストアップする際は職種一覧だけで行わず、勤務実態、支援場面、送迎体制までを確認する必要があります。

パート・アルバイト・派遣職員も確認対象になる場合がある

また、正社員だけでなく、
・パート
・アルバイト
・短期雇用
・派遣労働者
・業務受託者
・ボランティア

なども、対象となる業務や子どもとの接触状況によっては確認対象となります。
雇用形態や従事期間だけで判断せず、個別に確認する必要があります。

職員本人にはどのような手続きが生じるのか

犯罪事実確認はどのように行われるのか

犯罪事実確認は、事業者が所定の手続きを行い、対象となる職員本人が本人確認に必要な情報や書類を提出する流れで行われます。職員が警察署で一般的な犯罪経歴証明書を取得し、会社へ提出する制度ではありません。具体的な提出書類や手続きは、最新の公的案内を確認してください。

従事開始前までに確認が必要

なお、新たに対象業務に就く職員は、原則として業務に従事するまでに確認を終える必要があります。施行時点ですでに対象業務に就いている職員は、2029年12月24日までに確認し、その後も確認日を基準として5年ごとに再確認が行われます。

対象となる特定性犯罪とは

確認の対象となる特定性犯罪には、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪、児童買春、児童ポルノ禁止法違反など、法律で定められた犯罪が含まれます。いわゆる「痴漢」「盗撮」「淫行」に該当する行為については、具体的な犯罪類型や要件に照らして判断され、被害者が成人である場合も対象となることがあります。確認期間は、
・拘禁刑の執行終了から20年
・執行猶予判決の確定日から10年
・罰金刑の執行終了から10年

とされています。

確認手続きの前に職員へ説明しておくべきこと

職員には、戸籍情報の登録や研修受講などの手続きが発生するため、事業者は突然書類の提出を求めるのではなく、制度の目的や対象者の範囲、情報の利用目的、社内の取り扱い担当者を事前に説明する必要があるでしょう。

犯罪歴が確認されたらただちに解雇されるのか

即時解雇が認められるわけではない

特定性犯罪前科が確認され、性暴力が行われるおそれがあると判断される場合、事業者は、その職員を子どもと接する対象業務に就かせないための防止措置を講じなければなりません。

しかし、犯罪歴が確認されたからといって、即時解雇できるわけではありません。

まず検討される配置転換や業務変更

現職者については、まず子どもと接しない業務への配置転換や、業務範囲・勤務場所の変更、出向など雇用を維持できる方法を検討します。

雇用契約上、職種や勤務地を限定する合意がある場合は、配置転換に本人の同意が必要になることがあります。賃金や労働時間などの条件変更を伴う場合も、労働契約法上の手続きが問題になる可能性があるでしょう。

解雇が検討されるケースとは

配置転換などを十分に検討しても他の選択肢がなく、雇用継続が困難な場合には普通解雇が検討されますが、最終的には客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性があるかが個別に判断されます。

そのため、事業者側は施行前に

・就業規則
・採用時の誓約書
・内定通知書
・配置転換規定
・懲戒規定

を整備しておくことが大事です。

被害申告があった場合の初動対応

また、子どもや保護者から被害の申し出があった場合には、子どもの安全を確保したうえで、職員との接触を避ける暫定措置を講じます。ただし、調査前から加害行為があったと決めつけて懲戒処分を行うことは、適切ではありません。そうしたケースでは、子どもの保護と職員の権利保護を両立させる調査手順が求められます。

現場で重要なのは「身体接触をなくすこと」ではない

障害児支援では身体介助が不可欠

児童発達支援や放課後等デイサービスでは、排せつ、着替え、食事、移乗、姿勢保持、行動上の危険回避など、身体に触れる支援が必要です。だからこそ、法律への対応を恐れるあまり、必要な支援まで避けてしまうと、子どもの安全や発達を損なうおそれがあります。

必要な支援と不適切行為の線引きを明確にする

重要なのは、身体接触を一律に禁止することではなく、必要な支援と不適切な行為の境界を明確にすることです。
・私物端末での撮影
・子どもとの私的なSNS連絡
・説明のない身体接触
・必要性のない一対一の状況
・特定の子どもだけを理由なく担当し続ける行為

などについて、事業所としてのルールを定めておきましょう。

安全な支援のために環境と相談体制を整える

排せつ介助や更衣介助などについては、
・支援の目的や声かけ
・実施方法
・記録
・複数人で対応すべき場面
・扉やカーテンの扱い
・死角をつくらない工夫

などを職員間で共有し、環境を整備します。

発語や意思表示が難しい子どもにも利用できる相談方法を準備し、保護者に事業所の方針を説明しておくことも大事です。

施行前に事業者が準備すべきこと

事業者に求められる準備事項

事業者には、
・対象職員のリストアップ
・職員への説明
・就業規則や服務規律の見直し
・採用書類の整備
・相談窓口の設置
・疑いを把握した場合の報告・調査・保護の手順づくり
・職員研修
・犯罪事実確認情報の管理体制の構築

などが求められます。

情報漏えいを防ぐための管理体制を整備する

また、性犯罪歴に関する情報は極めて機微性が高いため、取り扱い担当者を必要最小限にし、情報管理規程・アクセス権限を整備することで、目的外利用や第三者提供を防ぐ必要があります。「誰が確認対象になったか」「誰について確認結果が出たか」という情報も、職場内で不用意に共有してはいけません。

まとめ

日本版DBSは、職員を疑うための制度ではありません。子どもを守る共通ルールを整え、職員が適切な支援の範囲を理解し、迷ったときに相談できる職場をつくる制度です。

法施行への準備を進めるにあたっては、子どもと保護者の安心だけでなく、職員が支援に集中できる職場づくりについても、しっかりと意識しましょう。

■出典


1.こども家庭庁「こども性暴力防止法」
2.こども家庭庁「こども性暴力防止法について(国民向けリーフレット)」(国民向けリーフレット)
3.こども家庭庁「こども性暴力防止法について(事業者向けリーフレット)」(事業者向けリーフレット)
4.こども家庭庁「こども性暴力防止法について(従事者向けリーフレット)」
5.こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン」 

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元地域包括支援センター センター長

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