■監修者/専門家

介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 社会福祉法人 三育ライフ 杉並エリアマネジャー 杉並区立重症心身障害児通所施設わかば 園長 公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長 公益社団法人日本介護福祉士会 元理事
療育(発達支援)の現場では、医療と教育・保育を組み合わせて支援が行われます。福祉業界への転職を考えている人のなかには、障害のある子どもを支援する仕事に興味がある人もいるはずです。
子どもの療育(発達支援)に携わるには、どのような施設で働けばよいのでしょうか。療育(発達支援)に関わる職種には、どのような種類があるのでしょうか。療育(発達支援)を担う施設や職種について詳しく見ていきましょう。
療育(発達支援)とは
その後、時代の変化に伴って、身体障害以外の障害児も療育の対象とされるようになっていきました。
■療育(発達支援)の対象
障害があるという診断を受けていなくても、自治体で療育(発達支援)の必要性が認められた場合も対象となります。
■療育と児童発達支援の違い
厚生労働省が公表しているガイドラインによると、次のように定義されています。
これを見ると、児童発達支援は、療育よりも支援の対象や範囲が広いことがわかります。ただし一般的には、多くの場合、児童発達支援と療育はほぼ同じ意味で使われています。
出典:厚生労働省 児童発達支援ガイドライン
■療育施設と保育園の違い
必要に応じて保育園と療育施設を併用して利用することも可能です。療育施設(療育センター)には児童発達支援事業所、児童発達支援センター、放課後等デイサービス、障害児入所施設などの種類があります。
療育(発達支援)を行っている施設

ここからは、主な療育施設を「通所型」「入所型」「訪問型」に分けて紹介します。
■通所型
・児童発達支援センター
・放課後等デイサービス
■児童発達支援事業所
療育(発達支援)を必要とする子どもと保護者が通いやすいように、通常、地域内に複数の事業所が開業しています。
■児童発達支援センター
児童発達支援事業所が障害児や保護者にとって身近な支援場所であるのに対し、児童発達支援センターは、より規模が大きく、行政機関や保育園などと連携しながら地域において以下、4つの中核的な機能を果たしています。
2.地域の障害児通所支援事業所に対するスーパーバイズ・コンサルテーション機能
3.地域のインクルージョン推進の中核機能
4.地域の発達支援に関する入口としての相談機能
そのため、地域の発達支援の入り口として子どもの発達に不安を感じる保護者からの相談に対応する、地域の事業所の職員向けに研修や事例検討会を開催するなどといった役割も担っています。
※参照:こども家庭庁 地域における児童発達支援センター等を中核とした障害児支援体制整備の手引き 概要①
■放課後等デイサービス
また、子育ての悩みへのアドバイス、専門機関の紹介、レスパイトケア(一時的な休息期間の提供)などによって、保護者をサポートする役割も担っています。
■入所型
・医療型障害児入所施設
■福祉型障害児入所施設
療育(発達支援)や機能訓練のほか、食事や入浴、排泄などの身体介護を中心とした生活支援も行います。
■医療型障害児入所施設
利用できるのは、入院による治療が必要な18歳未満の障害児です。
■訪問型
・保育所等訪問支援事業所
■居宅訪問型児童発達支援事業所
職員が対象となる子どもの自宅を訪問して、日常動作の指導や機能訓練などを実施します。
■保育所等訪問支援事業所
児童指導員や保育士等が、定期的に障害のある子どもが通っている施設を訪問し、子ども本人を支援しながら施設の教職員への指導やアドバイスも行います。
療育施設で働く主な職種

では、療育(発達支援)の現場では、どんな専門職が活躍しているのでしょうか。療育(発達支援)の現場で働く主な職種と仕事内容、その職種になるための方法を紹介します。
・保育士
・児童発達支援管理責任者(児発管)
・理学療法士(PT)
・作業療法士(OT)
・言語聴覚士(ST)
・看護師
・心理指導担当職員(公認心理士・臨床心理師)
■児童指導員
児童指導員になるためには、児童指導員任用資格が必要です。あくまで任用資格なので、児童指導員と名乗ることができるのは、任用された職場で働いている間だけです。
■児童指導員任用資格の主な要件
・社会福祉士や精神保健福祉士の国家試験に合格して資格登録が済んでいる
・大学や大学院で社会福祉学や心理学・教育学・社会学を専攻して卒業する
・高校や短期大学を卒業したうえで、児童福祉法に基づく事業で2年以上かつ360日以上の実務を経験する
・小学校や中学校・高等学校の教員免許を取得している
・児童福祉事業における実務を3年以上経験し、都道府県知事から認可を受ける
■保育士
保育士になるには、大学、短期大学、専門学校などの養成施設を卒業するか、年に2回実施される保育士の国家試験を受験して合格する必要があります。
■児童発達支援管理責任者(児発管)
児童発達支援管理責任者になるには、すでに取得している資格の有無によっても異なりますが、相談支援業務に5年以上、直接支援業務に8年以上などの実務経験を積んだうえで、基礎研修と実践研修を修了しなければなりません。さらに、児童発達支援管理責任者になったあとも、5年ごとに更新研修を受ける必要があります。
■理学療法士(PT)
療育(発達支援)の現場では、子どもたちがよりスムーズに日常的な動作ができるように、一人ひとりの課題や特性に応じて、遊びを通した機能訓練を行います。
理学療法士になるには、高校卒業後に厚生労働大臣が指定した養成施設(大学、短期大学、専門学校)を卒業して、国家試験に合格しなければなりません。
■作業療法士(OT)
作業療法士になるには、理学療法士と同様に、高校卒業後、厚生労働大臣が指定した養成施設(大学、短期大学、専門学校)で3年以上学んで卒業し、作業療法士国家試験に合格しなければなりません。
■言語聴覚士(ST)
言語訓練には、絵カードや文字カード、絵本がよく使われます。そのほかに、食べ物をうまく食べられない子どもや飲み込む力が弱い子どもに対して、摂食・嚥下訓練を行うこともあります。
言語聴覚士になるには、法律で定められた教育課程を修了して国家試験に合格する必要があります。一般的なルートは主に2つあり、高校卒業後に目指す場合は、文部科学大臣が指定した大学や短期大学または都道府県知事が指定した養成施設(3~4年制の専修学校)を卒業すると、国家試験の受験資格を得ることができます。4年制大学を卒業した後に目指す場合は、文部科学大臣が指定した大学・大学院の専攻科または専修学校(2年制)を卒業することで受験資格を得ることができます。
■看護師
看護師になるには、文部科学大臣が指定した大学や短期大学、厚生労働大臣が指定した養成施設を卒業したうえで、看護師国家試験に合格する必要があります。
■心理指導担当職員(公認心理師)
特に、公認心理師は国家資格で、受験するには要件を満たす必要があります。そのためのもっとも一般的なルートは、4年制の大学で必要な科目を履修した後、さらに大学院で2年間学んで受験資格を満たすというものです。ほかに、4年制の大学で必要な科目を修了した後に、国の指定を受けた施設で2年以上の実務を経験するというルートもあります。
療育施設職員の平均給与
次に、療育施設で働く職種別・サービス形態別の平均給与を見ていきましょう。
■療育を行う施設で働く主な職種の給与(常勤・処遇改善あり)
ここで紹介する給与は、療育(発達支援)以外の施設で働く職員も含んだものとなるため、資格や職種の給与の差を見るものとしてご活用ください。
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■療育を行う施設のサービス形態別給与(常勤・処遇改善あり)

高い給与を目指すのであれば、夜勤のある入所型施設がおすすめですが、ライフワークバランスを重視するのであれば通所型や訪問型など希望する条件にあわせて、さまざまな選択肢があります。
まとめ:ニーズが高まる療育の仕事を、選択肢の一つに
また、近年、発達障害をはじめとする子どもの障害への社会的理解が広がってきたことも、療育ニーズの高まりに関係していると考えられます。 子どもが好きで児童福祉に関心のある人にとって、療育(発達支援)は、子どもの発達に携わり、成長を間近でサポートできるやりがいのある仕事といえます。福祉業界への転職を考えている人は、今回紹介した療育(発達支援)に関わる施設や職種を選択肢の一つとして視野に入れてみてはどうでしょうか。
療育(発達支援)に関わる仕事には、どの職種であっても、子どもの発達や障害に関する幅広い知識が求められます。自分が進みたい方向性をしっかり見定め、十分に準備をしたうえで転職活動をスタートさせることが大切です。
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