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介護施設で注目のアニマルセラピーとは?効果・導入手順・注意点を紹介します!

介護施設で注目のアニマルセラピーとは?効果・導入手順・注意点を紹介します!

近年、介護施設で注目されているアニマルセラピーについて、その効果や導入時のポイントを専門家が解説します。これから導入を検討されている方や、興味がある方は必見です!【執筆者/専門家:後藤 晴紀】


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本日のお悩み:アニマルセラピーとは?実施のポイントも知りたい!

介護業界でアニマルセラピーというものを取り入れている施設があるようです。
そもそもアニマルセラピーとはどのようなものなのでしょうか。また実施の際の注意点などがあればそちらも教えてください。

アニマルセラピーの意義や効果、導入時のポイントを紹介します!

執筆者/専門家

後藤 晴紀

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/9

・けあぷろかれっじ 代表 ・NPO法人JINZEM 監事 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士 『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。

ご質問ありがとうございます! アニマルセラピーについてのご質問ですね! ご質問者さんは動物はお好きですか?

私は大好きです! 犬や猫と一緒に過ごすと、自然と笑顔になったり気持ちが穏やかになったりしますよね。動物と触れ合うと「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンが分泌されるといわれていて、癒しや安心感を与えてくれます。

最近では、猫カフェや犬カフェといった動物と触れ合える場所も増えています。忙しい毎日の中でストレスを抱える人にとって、動物と触れ合うことは大きな癒しになっているのだと思います。

今回は、老人ホームなど介護施設におけるアニマルセラピーについて、その基本的な意義や具体的にどんな活動で、どういった効果が期待できるのか?また、導入時に注意すべきポイントをお届けできればと思います。

アニマルセラピーとは?

「アニマルセラピー(Animal-Assisted Therapy:AAT)」とは、動物を介在させた治療、支援的な介入の総称で、利用者さんの社交性や感情、認知機能などを向上させる補完療法の1つとされています。

広くは「動物介在活動」「動物介在療法」「動物介在教育」の3つに分類され、介護現場でよく導入されるのは、「楽しみや癒しを提供する活動(動物介在活動)」と、「精神的身体的機能、社会的機能の向上など治療目的に沿ったプログラムが組まれ、効果判定までを医療従事者が実施するもの(動物介在療法)」が主となります。

「動物介在教育」については、高齢者福祉よりも、動物の存在から命の大切さや自分より弱い存在に対する思いやりの心ややさしさを学ぶ学校教育の場面や、犬との事故防止のためのプログラムとして子どもたちを対象に導入されることが多いです。
※参照:公益社団法人 日本動物病院協会 アニマルセラピー 人と動物のふれあい活動(CAPP)

福祉施設でのアニマルセラピーの具体的な活動例

・外部のボランティアやセラピードッグの認定団体に訪問してもらい動物に触れ合うレクリエーション
・散歩や餌やり、名前を呼ぶなど、動物と利用者さんが能動的に関わるプログラム

このようなプログラムを通じて、動物と触れ合う場が設けられています。

利用者さんに期待される効果とは?

では、アニマルセラピーを導入することで、利用者さんにはどのような効果があるのでしょうか。主な効果は以下の通りです。

1.コミュニケーションの活性化
2.認知症リスクの軽減や意欲向上
3.社会的交流のきっかけ作り

1.コミュニケーションの活性化

公益社団法人日本獣医師会の資料によると、動物といるときの高齢者は、笑顔・アイコンタクト・短い会話のすべてが明らかに増えるそうです。

この効果から周囲との関わりの増加も期待でき、生きがいや活力の向上にも繋がるでしょう。
※参照:公益社団法人 日本獣医師会 水谷渉、柴内裕子、内山晶、大澤晴子「高齢者福祉施設等で実施される「アニマルセラピーについての効果」の検証事業」日本獣医師会雑誌第61巻1号、2008年

2.認知症リスクの軽減や意欲向上

動物を飼育した経験のある方はご存知かもしれませんが、ペットと触れ合うことで、お世話をしてあげるという役割意識が高くなり、利用者さん側が他者に対して、何かを「してあげる」という主体的な姿勢が芽生えます。

餌をあげることや抱っこなど、日々の生活に動機づけが生まれ、認知症リスクの軽減にもつながると期待されているようです。

3.社会的交流のきっかけ作り

さらに、先述した内容とも重なりますが、動物を通して他の利用者さんやスタッフとの会話が生まれ、施設内での交流(友人や会話の輪)が広がる効果も期待できるでしょう。

これらのように、動物との交流は精神的な安定や活力の向上などもたらす効果はさまざま期待されていて、実際に、ホルモンバランスへの良い影響(オキシトシン等)や、副交感神経が亢進されてリラックス状態になるという報告も行われています。

まだまだ科学的な研究が進められている段階ですが、利用者さんの動物に対する嗜好性によって、大きな効果が得られる手段であると思います。
※参照:ユニ・チャーム株式会社 産学連携で、人と犬の触れ合いによる効果を研究

導入にあたっての注意点(安全と衛生面を中心に配慮が必要)

介護施設 アニマルセラピー

アニマルセラピーには多くのメリットがありますが、その一方で安全や衛生面、利用者さんの嗜好の観点からデメリットともなってしまう懸念があるため注意が必要です。

特に、施設に動物が入る場面では、看護職員さんも安全や衛生管理面で敏感にもなると思いますので、事前の準備も含めて丁寧に確認していきましょう。

1.利用者さんの安全配慮
2.衛生管理の徹底
3.無理強いにならないようにする
4.動物の健康と負担への配慮
5.アレルギーへの配慮

1.利用者さんの安全配慮

アニマルセラピーに参加する動物は、訓練された穏やかな性格であることが必須です。

特に、噛みつきやひっかき、飛びつきなどの事故が起こらないよう十分な注意が必要です。爪が伸びていないか、手入れがされているかなどは、事前のチェックポイントとして、訪問してくださる団体に必ず確認しましょう。また、過度な鳴き声(特に小型犬)など、問題行動が起こらないように選定し、対応を徹底することも大切です。

これらの対応は、訪問団体が十分理解している場合が多いですが、訪問実績などから高齢者施設への訪問経験があるかどうかも確認しておくと安心です。

さらに、予期せぬ事故(たとえば利用者さんが動物に暴力を振るうケースなど)に備え、事前に施設と外部担当者との間で対応ルールや保険項目を確認・共有しておくことが重要です。「大丈夫だろう」と安易に考えず、予測して備えることが大切です。

2.衛生管理の徹底

高齢者は免疫が低下しがちであるため、動物由来感染症へのリスク管理が非常に重要です。

動物側は、定期的な健康診断や予防接種、シャンプー、爪切り、ブラッシングを行い、衛生状態が維持されているかを必ず確認しましょう。また、活動後には利用者さん・スタッフともに手洗いや消毒の徹底を促すことを忘れないようにしましょう。
※参照:厚生労働省 動物由来感染症

3.無理強いにならないようにする

動物が苦手な方やトラウマのある方、体調不良の方には、アニマルセラピーへの参加を強制しないことが基本です。

たとえば「昔噛まれた経験」など心理的トラウマを持つ方には、無理に触れさせることは控えましょう。恐怖心によって、パニックや身体反応を引き起こす恐れがあります。事前にご家族やご本人への確認や調査は必ず実施してください。

また、長時間の活動は動物にも利用者さんにも負担がかかるため、適宜休息や短時間のプログラムを設定し、終了タイミングや休憩を明確に計画することが必要です。

4.動物の健康と負担への配慮

動物に人間の食べ物(チョコレート、牛乳、魚介類など)を与えないよう、利用者さんへの付き添いが必要です。どうしても「かわいいから」と、餌の代わりに人間の食べ物を与えようとされる方もいらっしゃると思いますが、動物の体調管理にも気を配りましょう。

また、動物がストレスを感じる行動(無理に抱く、精神心理症状がある方など落ち着けていない状態で大声を出してしまう等)は避け、常に見守り体制を整えることが重要です。逆に、動物を見ると穏やかになる利用者さんについては、積極的に関わらせて差し上げると良いでしょう。

5.アレルギーへの配慮

利用者さんやスタッフに動物アレルギーを持つ方がいれば、その動物との接触は避ける配慮が必要です。

事前にアレルギーの有無をしっかり確認し、該当する方がいる場合は、アニマルセラピーの場に参加しないようにするなど、十分に配慮しましょう。

アニマルセラピー導入の手順

最後に、実際にアニマルセラピーを導入する際の手順についてご紹介します。あくまで一例ですが、以下の流れで進めると安全かつ効果的です。

1.目的設定とプログラム設計
2.事前調査と同意取得
3.動物・提供者の選定と外部連携
4.スタッフ教育
5.プログラム計画の立案
6.実施・トライアルとモニタリング
7.継続的評価と改善

1.目的設定とプログラム設計

まず、「何のためにアニマルセラピーを導入するのか」を明確にします。

たとえば、認知機能の維持(動物介在療法)やコミュニケーション活性化(動物介在活動)など、目的に応じてプログラム内容を設計しましょう。

2.事前調査と同意取得

利用者さんやスタッフの動物への反応、アレルギーやトラウマの有無を把握し、本人とご家族の同意を得ます。個別の希望や不安も丁寧に確認しましょう。

3.動物・提供者の選定と外部連携

信頼できる外部協力機関やセラピードッグの認定団体と連携し、動物のしつけや衛生管理が徹底されているか確認します。

ボランティアや動物提供者の実績もチェックしましょう。

4.スタッフ教育

感染防止や動物の行動観察、利用者さんの見守り、トラブル対応などについて、事前にスタッフ研修を行います。

ワークショップ形式でリスクや効果を共有し、現場での対応力を高めるとよいでしょう。

5.プログラム計画の立案

レクリエーション目的か治療目的かを明確にし、活動内容(触れ合い、散歩、遊びなど)や時間・頻度を設定します。

無理のない範囲で、動物と利用者さん双方の負担を考慮しましょう。

6.実施・トライアルとモニタリング

まずは少人数で試験的に実施し、スタッフが常に見守りながら事故や異変がないか確認します。 活動後は参加者の表情や行動の変化を記録し、効果や課題を評価します。

7.継続的評価と改善

スタッフ・利用者さん双方のフィードバックをもとに、安全対策やプログラム内容を見直し、より良い運営を目指します。

最後に:丁寧な事前準備で有意義なアニマルセラピーを!

アニマルセラピーは、利用者さん一人ひとりの「生きる意欲」や「心の温かさ」を引き出す素敵な時間になると思います。

事前準備を丁寧に行うことで、セラピーに参加される目的や意味、動機づけができ、その人らしいケアの実践になると思います。ぜひ職場の皆さんと共有していただき、効果的なアニマルセラピーを実現してください。

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この記事のライター

・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事

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