本日のお悩み:アニマルセラピーとは?実施のポイントも知りたい!
そもそもアニマルセラピーとはどのようなものなのでしょうか。また実施の際の注意点などがあればそちらも教えてください。
アニマルセラピーの意義や効果、導入時のポイントを紹介します!
■執筆者/専門家
・けあぷろかれっじ 代表 ・NPO法人JINZEM 監事 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士 『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。
私は大好きです! 犬や猫と一緒に過ごすと、自然と笑顔になったり気持ちが穏やかになったりしますよね。動物と触れ合うと「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンが分泌されるといわれていて、癒しや安心感を与えてくれます。
最近では、猫カフェや犬カフェといった動物と触れ合える場所も増えています。忙しい毎日の中でストレスを抱える人にとって、動物と触れ合うことは大きな癒しになっているのだと思います。
今回は、老人ホームなど介護施設におけるアニマルセラピーについて、その基本的な意義や具体的にどんな活動で、どういった効果が期待できるのか?また、導入時に注意すべきポイントをお届けできればと思います。
アニマルセラピーとは?
広くは「動物介在活動」「動物介在療法」「動物介在教育」の3つに分類され、介護現場でよく導入されるのは、「楽しみや癒しを提供する活動(動物介在活動)」と、「精神的身体的機能、社会的機能の向上など治療目的に沿ったプログラムが組まれ、効果判定までを医療従事者が実施するもの(動物介在療法)」が主となります。
「動物介在教育」については、高齢者福祉よりも、動物の存在から命の大切さや自分より弱い存在に対する思いやりの心ややさしさを学ぶ学校教育の場面や、犬との事故防止のためのプログラムとして子どもたちを対象に導入されることが多いです。
※参照:公益社団法人 日本動物病院協会 アニマルセラピー 人と動物のふれあい活動(CAPP)
■福祉施設でのアニマルセラピーの具体的な活動例
・散歩や餌やり、名前を呼ぶなど、動物と利用者さんが能動的に関わるプログラム
このようなプログラムを通じて、動物と触れ合う場が設けられています。
利用者さんに期待される効果とは?
2.認知症リスクの軽減や意欲向上
3.社会的交流のきっかけ作り
■1.コミュニケーションの活性化
この効果から周囲との関わりの増加も期待でき、生きがいや活力の向上にも繋がるでしょう。
※参照:公益社団法人 日本獣医師会 水谷渉、柴内裕子、内山晶、大澤晴子「高齢者福祉施設等で実施される「アニマルセラピーについての効果」の検証事業」日本獣医師会雑誌第61巻1号、2008年
■2.認知症リスクの軽減や意欲向上
餌をあげることや抱っこなど、日々の生活に動機づけが生まれ、認知症リスクの軽減にもつながると期待されているようです。
■3.社会的交流のきっかけ作り
これらのように、動物との交流は精神的な安定や活力の向上などもたらす効果はさまざま期待されていて、実際に、ホルモンバランスへの良い影響(オキシトシン等)や、副交感神経が亢進されてリラックス状態になるという報告も行われています。※
まだまだ科学的な研究が進められている段階ですが、利用者さんの動物に対する嗜好性によって、大きな効果が得られる手段であると思います。
※参照:ユニ・チャーム株式会社 産学連携で、人と犬の触れ合いによる効果を研究
導入にあたっての注意点(安全と衛生面を中心に配慮が必要)
特に、施設に動物が入る場面では、看護職員さんも安全や衛生管理面で敏感にもなると思いますので、事前の準備も含めて丁寧に確認していきましょう。
2.衛生管理の徹底
3.無理強いにならないようにする
4.動物の健康と負担への配慮
5.アレルギーへの配慮
■1.利用者さんの安全配慮
特に、噛みつきやひっかき、飛びつきなどの事故が起こらないよう十分な注意が必要です。爪が伸びていないか、手入れがされているかなどは、事前のチェックポイントとして、訪問してくださる団体に必ず確認しましょう。また、過度な鳴き声(特に小型犬)など、問題行動が起こらないように選定し、対応を徹底することも大切です。
これらの対応は、訪問団体が十分理解している場合が多いですが、訪問実績などから高齢者施設への訪問経験があるかどうかも確認しておくと安心です。
さらに、予期せぬ事故(たとえば利用者さんが動物に暴力を振るうケースなど)に備え、事前に施設と外部担当者との間で対応ルールや保険項目を確認・共有しておくことが重要です。「大丈夫だろう」と安易に考えず、予測して備えることが大切です。
■2.衛生管理の徹底
動物側は、定期的な健康診断や予防接種、シャンプー、爪切り、ブラッシングを行い、衛生状態が維持されているかを必ず確認しましょう。また、活動後には利用者さん・スタッフともに手洗いや消毒の徹底を促すことを忘れないようにしましょう。
※参照:厚生労働省 動物由来感染症
■3.無理強いにならないようにする
たとえば「昔噛まれた経験」など心理的トラウマを持つ方には、無理に触れさせることは控えましょう。恐怖心によって、パニックや身体反応を引き起こす恐れがあります。事前にご家族やご本人への確認や調査は必ず実施してください。
また、長時間の活動は動物にも利用者さんにも負担がかかるため、適宜休息や短時間のプログラムを設定し、終了タイミングや休憩を明確に計画することが必要です。
■4.動物の健康と負担への配慮
また、動物がストレスを感じる行動(無理に抱く、精神心理症状がある方など落ち着けていない状態で大声を出してしまう等)は避け、常に見守り体制を整えることが重要です。逆に、動物を見ると穏やかになる利用者さんについては、積極的に関わらせて差し上げると良いでしょう。
■5.アレルギーへの配慮
事前にアレルギーの有無をしっかり確認し、該当する方がいる場合は、アニマルセラピーの場に参加しないようにするなど、十分に配慮しましょう。
アニマルセラピー導入の手順
2.事前調査と同意取得
3.動物・提供者の選定と外部連携
4.スタッフ教育
5.プログラム計画の立案
6.実施・トライアルとモニタリング
7.継続的評価と改善
■1.目的設定とプログラム設計
たとえば、認知機能の維持(動物介在療法)やコミュニケーション活性化(動物介在活動)など、目的に応じてプログラム内容を設計しましょう。
■2.事前調査と同意取得
■3.動物・提供者の選定と外部連携
ボランティアや動物提供者の実績もチェックしましょう。
■4.スタッフ教育
ワークショップ形式でリスクや効果を共有し、現場での対応力を高めるとよいでしょう。
■5.プログラム計画の立案
無理のない範囲で、動物と利用者さん双方の負担を考慮しましょう。
■6.実施・トライアルとモニタリング
■7.継続的評価と改善
最後に:丁寧な事前準備で有意義なアニマルセラピーを!
事前準備を丁寧に行うことで、セラピーに参加される目的や意味、動機づけができ、その人らしいケアの実践になると思います。ぜひ職場の皆さんと共有していただき、効果的なアニマルセラピーを実現してください。
■あわせて読みたい記事
高齢者向けレクリエーション31選|室内OK・道具なしで盛り上がる簡単レクまとめ | ささえるラボ
https://mynavi-iryofukushi.jp/media/articles/750[2025年5月16日更新] 「レクリエーション担当になったけど企画が苦手」「もうネタ切れ」など介護施設におけるレクリエーションの企画に悩む介護職は多いのでは。この記事では、道具なしや、室内OK、座ったままできるなどジャンル別に高齢者向けレクリエーションを31種類紹介します。レクリエーションの盛り上げ方や注意点なども徹底解説!【監修者/専門家:後藤 晴紀】
高齢者の推し活がもたらすメリットとは?〜介護現場で高齢者に広がる応援文化〜 | ささえるラボ
https://mynavi-iryofukushi.jp/media/articles/1340「推し活」は応援する喜びから生きがいを育みます。それは高齢者も同じであり、認知・心理・社会的に様々なメリットをもたらします。この記事では、介護現場での実例紹介しつつ、推し活がQOL向上にどう貢献するかを紹介します。【執筆者/専門家:伊藤 浩一】

・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士