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介護福祉士と社会福祉士の違い
介護福祉士と社会福祉士は、いずれも福祉・介護業界で働く専門職であり、国家資格でもあります。しかし、なかにはそれぞれの違いがよくわからない方や、どちらを目指すかで悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、この記事では2つの資格の違いについて、支援対象・仕事内容・給与・資格の取得方法・試験科目・合格率という6つの項目に分けて解説します。
1.支援対象の違い
したがって、社会福祉士には、介護福祉士以上に幅広い専門知識が求められます。介護福祉士が身につける専門知識が介護に必要な知識中心であるのに対し、社会福祉士の専門知識は、医学、心理学、社会学、社会保障制度、福祉サービス、相談援助の方法など、多岐にわたります。
2.仕事内容の違い
一方、社会福祉士の主な仕事内容は、高齢者や障害者、生活困窮者など、困りごとを抱えている人の相談に乗り、専門知識を活かして課題解決に導くことです。また、社会福祉士でも現場で直接支援を行うケースも多く、相談業務だけでなく生活支援や就労支援など幅広い業務に携わることがあります。
3.給与の違い
ただし、この年収差には雇用形態の違いも影響しています。今回の調査では、社会福祉士の回答者のほうが正規雇用の割合が高く、それが年収の差につながっている可能性があります。実際に、厚生労働省が公表している「介護施設で働く常勤職員の月給」を見ると、
社会福祉士:397,620円
と、月給ベースでは約48,000円の差です。これを年収換算すると約57万円となり、先ほどの年収差(約111万円)の半分程度にとどまります。 ※
このことから、社会福祉士の方が平均給与は高い傾向にあるものの、勤務形態や職種によっては介護福祉士の方が高収入となるケースもあると考えられます。 転職や就職を検討する際は、資格の平均年収だけで判断するのではなく、実際の給与規定や求人票をしっかり比較・確認することが重要です。
※参照:厚生労働省 令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果P161
4.資格の取得方法の違い
大きな違いは、介護福祉士には「実務経験3年+研修の修了」で受験資格を得られる実務経験ルートがあるのに対し、社会福祉士はどのルートでも、大学や短期大学、養成施設のいずれかを卒業することが求められる点です。以下で、詳しく解説します。
■介護福祉士の受験資格
今回は日本人向けの資格取得ルートに関して解説をします。
2.実務経験ルート
3.福祉系高校ルート
■1.養成施設ルート
ただし、令和9年度(2027年度)以降は、養成施設を卒業した場合でも国家試験の合格が必須となります(従来は一部免除あり)。
■2.実務経験ルート
このルートでは、介護施設などで実務経験を3年以上かつ540日以上積んだうえで、介護福祉士実務者研修または介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修を受講することで、国家試験の受験資格を得ることができます。
ただし、「介護職員基礎研修」は2012年に廃止されており、現在は新規取得できません。 そのため、実務経験ルートは介護福祉士実務者研修を取得するルートが主流です。
■3.福祉系高校ルート
ただし、特例高校で学んだ人は、卒業後に9ヶ月以上の実務を経験する必要があります。
■社会福祉士の受験資格
2.短期養成施設ルート
3.一般養成施設ルート
■1.福祉系大学・短大ルート
2年制または3年制の福祉系短期大学でも、指定科目を履修したうえで、1~2年の相談援助実務を経験すると、受験資格を満たすことができます。
■2.短期養成施設ルート
4年制の福祉系大学で基礎科目のみを履修した人が受験資格を得るには、さらに短期養成施設で6ヶ月以上学ぶ必要があります。2年制または3年制の福祉系短大などで基礎科目のみを履修した場合は、その後、相談実務業務を1~2年経験したうえで、短期養成施設でも6ヶ月以上学ぶ必要があります。
また、社会福祉主事養成機関を修了したあと、相談援助実務を2年経験したうえで、短期養成施設で6ヶ月以上学ぶというルートもあります。社会福祉主事養成機関は主に民間の専門学校で、通学制だと学校によって2年制から4年制までさまざまです。通信制の場合は1年制が一般的です。
そのほか、児童福祉司、身体障害者福祉司、査察指導員、知的障害者福祉司、老人福祉指導主事を経て社会福祉士を目指すルートもあります。上記5種の専門職のうちいずれかの実務を4年以上経験したうえで、短期養成施設で6ヶ月以上学ぶと、国家試験の受験資格を得ることができます。
■3.一般養成施設ルート
一般の4年制大学を卒業した人が社会福祉士を目指す場合、一般養成施設で1年以上学ぶことで、国家試験の受験資格を得ることができます。また、短期大学を卒業した人は、相談援助業務の実務を1~2年経験した後、一般養成施設で1年以上学ぶと、受験資格を得ることができます。
なお、大学や短期大学を卒業していない人が受験資格を得るには、相談援助の実務を4年経験したうえで、一般養成施設で1年以上学ぶ必要があります。
5.試験科目の違い
ここでは、第38回(令和7年度)介護福祉士国家試験の内容をもとに、各国家試験の主な試験科目を紹介します。
■介護福祉士試験の出題科目(第38回試験)
2. 人間関係とコミュニケーション
3. 社会の理解
4. こころとからだのしくみ
5. 発達と老化の理解
6. 認知症の理解
7. 障害の理解
8. 医療的ケア
9. 介護の基本
10. コミュニケーション技術
11. 生活支援技術
12. 介護過程
13. 総合問題
■社会福祉士試験の出題科目(第38回試験)
2. 心理学と心理的支援
3. 社会学と社会システム
4. 社会福祉の原理と政策
5. 社会保障
6. 権利擁護を支える法制度
7. 地域福祉と包括的支援体制
8. 障害者福祉
9. 刑事司法と福祉
10. ソーシャルワークの基盤と専門職
11. ソーシャルワークの理論と方法
12. 社会福祉調査の基礎
13. 高齢者福祉
14. 児童・家庭福祉
15. 貧困に対する支援
16. 保健医療と福祉
17. ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)
18. ソーシャルワークの理論と方法(専門)
19. 福祉サービスの組織と経営
上記の科目名を見比べるだけでも、介護福祉士試験よりも社会福祉士試験のほうが、科目数が多く、学ぶべき内容が幅広いことがわかります。
6.国家試験の合格率の違い
近年の合格率を見ると、介護福祉士国家試験の合格率は70%~80%前後と安定しています。一方、社会福祉士国家試験の合格率は30%から60%前後を推移しており、年度によって変動があります。
このように、介護福祉士試験と社会福祉士試験では、受験資格を得るまでのルート、科目数、合格率などに違いがありますが、いずれの試験においても、合格するには、大学や養成施設などで学んだ内容をしっかり理解し、基礎知識を身につける必要があります。
※参照1:厚生労働省 第37回介護福祉士国家試験 合格発表について
※参照2:厚生労働省 第37回社会福祉士国家試験合格発表
介護福祉士の主な勤務先
■入居型介護施設
入居型介護施設で働く介護福祉士の主な仕事内容は、食事介助や移動介助、排泄介助、入浴介助といった身体介護、居室の掃除や利用者の衣類の洗濯といった生活援助です。イベントやレクリエーションの担当者として、企画・実施に携わることもあります。チームリーダーや主任として、部下の指導や育成にあたっている介護福祉士も少なくないでしょう。
■通所型介護施設(デイサービス)
また、通所型介護施設ではほぼ毎日、利用者さんの機能訓練と生きがいを目的に、脳トレゲームやリズム体操、簡単なスポーツといったレクリエーションを行っています。このようなレクリエーションを企画・実施するのも介護福祉士の仕事の一つです。
■訪問介護事業所
訪問介護では、ほとんどの場合、一人で身体介護にあたらなくてはならないため、一般的に、介護職員初任者研修以上の資格を持っていることがホームヘルパーとして働く条件とされています。介護福祉士はこの条件を満たすため、多くの介護福祉士が訪問介護の現場で活躍しています。
■障害者施設
サービス内容や支援の範囲は施設の種類によって異なりますが、これらの障害者施設では、生活支援員と呼ばれる職員が、利用者の身体介護や生活援助を行っています。生活支援員に必須の資格は特にありませんが、介護福祉士の知識やスキルが活かせる職種の一つといえます。
■医療機関
採用要件は医療機関によりまちまちですが、たしかな介護スキルと専門知識を持つ介護福祉士は、介護のプロとして多くの職場で歓迎されるでしょう。
社会福祉士の主な勤務先
■介護施設
生活相談員は、介護施設の窓口として、入退所の手続き、利用者さんやその家族からの相談対応、関係各所との調整を行います。なお、介護老人保健施設(老健)で働く相談員は支援相談員と呼ばれます。
■障害者施設
そのほか、就労支援事業所で、利用者さんの就労に向けて必要なサポートやスキルの指導を行う就労支援員として働く社会福祉士もいます。
■医療機関
医療ソーシャルワーカーは、医療機関に入院する患者さんやそのご家族が安心して入院生活を送れるように、心理面・経済面の相談に応じ、退院後の社会復帰に向けてさまざまな支援、関係各所との連絡・調整を行います。
■行政機関
ケースワーカーは、高齢者や障害者、生活困窮者など、困りごとを抱えるさまざまな人からの相談に応じる職種です。面接や家庭訪問を通して状況を把握し、自ら生活指導をしたり、医療機関や介護施設と連絡をとって適切な支援につなげたりします。
児童相談所で相談業務を行う社会福祉士は、児童福祉司と呼ばれます。児童福祉司は、虐待通報への対応をはじめ、子どもや保護者との面談、子どもの家庭への訪問、支援計画の作成、一時保護の判断などの業務にあたります。
■社会福祉協議会
職員の仕事内容は、高齢者や障害者、生活困窮者からの相談への対応、子育て中の親子が気軽に集えるサロンの開催、市民のボランティア活動の推進や支援など、多岐にわたります。
■地域包括支援センター
社会福祉士は、総合的な相談への対応・支援のほか、消費者被害や虐待に関する相談への対応、成年後見制度の紹介などの業務を担当します。
■学校
スクールソーシャルワーカーは、社会福祉に関する専門知識を活かして、いじめや不登校、児童虐待といった問題に直面する児童や生徒の相談に応じ、問題解決や状況の改善に向けてさまざまな支援を行います。
介護福祉士と社会福祉士、目指すならどっち?
■自分のキャリアパスと照らし合わせて検討しましょう!
一方の社会福祉士は、高齢者に限らず、福祉を必要とする幅広い人からの相談に対応する職種です。相談対応や家庭訪問で人と接する場面が多いものの、デスクで事務的な作業をする機会も少なくありません。
基本的には、主に高齢者を支援したい人、介護業界で活躍したい人には介護福祉士、困りごとや悩みを抱える幅広い世代の人の支援をしたい人、福祉・介護業界のさまざまな現場を就職・転職先として視野に入れたい人には社会福祉士が適しているといえます。
また、行政機関で働く場合には社会福祉士の資格が求められるケースが多く、社会福祉士のほうが高収入になる傾向があるので、公務員になりたい人、高収入を得たい人には社会福祉士のほうがおすすめといえるかもしれません。ただし、介護福祉士でも職場や制度によっては高収入となる場合があるため、給与面だけでなく仕事内容やキャリアパスも含めて検討することが大切です。
介護福祉士と社会福祉士の両方を取得するには?
たとえば、一般大学を卒業した人の場合、介護施設に入職し、介護職として働きながら介護福祉士、社会福祉士の順に取得を目指すというルートが考えられます。介護職としての実務経験が3年に達した時点で実務者研修を修了すると、まず介護福祉士の国家試験にチャレンジできます。
介護福祉士の資格を取得したあと、通信制または通学制の社会福祉士の養成施設で1年以上学んで卒業すると、社会福祉士の国家試験を受けることができます。合格すると、両方の資格を得ることができます。
■介護福祉士から社会福祉士を目指す場合に免除できる項目
具体的には、介護福祉士や精神保健福祉士などの福祉専門職の資格を持っている場合、最大60時間分の実習が免除されます(通常は最大240時間)。この制度を活用することで、資格取得の負担を軽減することができます。
また、社会福祉士養成課程に入学する前に1年以上の相談援助実務の経験がある場合は、「ソーシャルワーク実習指導」や「ソーシャルワーク実習」自体が免除される場合もあります。ただし、介護職の一般的な介護業務だけではなく、介護支援専門員や生活相談員など、利用者さんの相談や指導にあたる職種での実務経験が対象となります。
※参照:厚生労働省 社会福祉士養成課程における教育内容等の 見直しについて
■両方を取得するメリット
ただし、介護福祉士と社会福祉士をダブルで取得するには、相応の時間と費用がかかるうえ、働きながら勉強を重ねるのは大変です。そうしたデメリットについても理解しておきましょう。
まとめ:介護福祉士、社会福祉士のいずれも将来的にニーズの高まる職種
福祉・介護業界でキャリアアップを目指すのであれば、両者の違いを理解したうえで、自分のキャリアビジョンや理想の将来像に合うほうを取得するとよいでしょう。将来像がそこまで明確ではない人や将来の可能性を広げたい人は、介護福祉士、社会福祉士のダブル取得を視野に入れてもよいかもしれません。
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