本日のお悩み:亡くなった方のご家族にどのような声をかければよいかわからない
その際に、悲しいという気持ちはあるのですがご家族はそれ以上に悲しいのであると思うと、どのような声をかければよいかわかりません。
利用者さんが亡くなった際のご家族への声のかけ方を教えてください。
迷いは優しさの証
■執筆者/専門家
社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士 介護現場の職員の後、祖父の在宅介護での後悔と、自身の介護うつ経験から、そのきっかけになった排泄の支援を追求すべくおむつメーカーへ転職。 1000人以上の方のおむつ交換に触れ、介護する側もされる側も双方が「シッカリ出して、スッキリ生きる」ことが、より良い人生に繋がる。気持ち良く「出す」ことをサポートすることで良い循環が生まれることを実感する。
そんなときに「どう声をかけたらいいのか分からない」と戸惑うお気持ち、とてもよく分かります。 でも、その迷いこそが、あなたがご家族を思いやる優しさの表れだと感じます。
「ご家族の悲しみに比べれば、自分は立場が違う」
「下手なことを言って傷つけてしまったらどうしよう」
と、迷ったりするのも無理はありません。 そんな風に考えてしまうのは、誠実で心優しい方だからこそだと思います。
言葉よりも大切な「共にいること」
完璧な言葉を探すよりも、「この人も一緒に家族のことを大切に思ってくれている」と、ご家族に感じてもらうことが重要です。沈黙のうなずきでも、そっと手を合わせる仕草でも、目に涙を浮かべることでも、全く構いません。無理に言葉を探さなくても、その真心はちゃんとご家族の心に届きます。
【専門家の実体験】祖父と私が過ごした時間に寄り添ってくれた介護職員
しかし、最期まで一番近くで介護をしていた私は、素直にその言葉を受け取ることができませんでした。「もっと何かできたのではないか」という後悔の気持ちが強く、「大往生」と言われるたびに、「本当にそうなのかな…」と心がざわつきました。
そのときに気づきました。どんなに正しい言葉でも、受け取る人の心の状態とタイミングによっては重荷になってしまうことがあるということを。
逆に、心に残ったのは、祖父と私が一緒に過ごした時間を懐かしそうに話してくれた方の言葉でした。「おじいちゃんをおぶってトイレに走るのを見て、あぁ本当に大切にしているんだなと思ったよ」「介護用ベッドを搬入した時の、お孫さんを見る穏やかな表情が心に残っています」そんな具体的な風景を共有してくれたとき、私は後悔の暗い気持ちからではなく、頑張っていたことを思い出せて、泣くことができました。
【具体例あり】ご家族の心に寄り添う声かけのポイント3選
1.訃報を受けた際、まずは短い言葉から
2. 故人との具体的な思い出を共有する
3.ご家族の言葉にそっと耳を傾け寄り添う
■1.訃報を受けた際、まずは短い言葉から
「○○さんとご一緒させていただけた時間を、大切に思っております」
「心からお悔やみ申し上げます」
「最期まで○○さんらしくいらっしゃったこと、心に残っています」
■2. 故人との具体的な思い出を共有する
「○○さんの『ありがとう』という言葉が、いつも私たちの心を温めてくれました」
「最期まで、ご家族のことを大切に思っていらっしゃる様子が印象的でした」
■3.ご家族の言葉にそっと耳を傾け寄り添う
「お辛い気持ち、よく分かります」
「○○さんがいつもご家族のことを大切に思っていらっしゃることが伝わってきました」
「私たちにとっても、かけがえのない方でした」
たった一言のようでも、それだけで気持ちは十分に伝わります。
【具体例あり】ご家族への声かけで避けたほうがよい言葉や留意事項
■「大往生でしたね」「もう苦しまなくて済みますね」
■「元気を出してください」「時間が解決してくれます」
■宗教・宗派への配慮
・浄土真宗:「ご往生なさいました」
・神道:「御霊のご平安をお祈りいたします」
・キリスト教:「神の御許での安らかなお眠りを」
ただ、利用者さんの宗教や宗派まで把握をすることは難しいかと思いますので、一般的には、「心よりお悔やみ申し上げます」とお伝えするのが良いと思います。
最後に:正しい言葉より個人と家族を思う心が大切
私が祖父を看取ったときに一番心に残ったのは、完璧な弔辞でも専門的なアドバイスでもありませんでした。涙を浮かべながら寄り添ってくださった方の、その真心でした。
ご相談者様も、その自然な優しさを信じて、ご自身らしい方法でご家族に寄り添ってください。きっと、あなたの真心はご家族の心に静かに届き、大切な支えとなるはずです。
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社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士