利用者と家族の意向が合わない時はどうする?介護職員が押さえたい対応のポイントを解説

利用者と家族の意向が合わない時はどうする?介護職員が押さえたい対応のポイントを解説

利用者と家族の意向が一致しない場合、ケアマネジャーや介護職員はどのように対応すべきなのでしょうか。本人意思の尊重やアドボカシーの考え方、多職種連携の重要性について専門家がわかりやすく解説します。【執筆者/専門家:古畑 佑奈】


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本日のお悩み:利用者と家族の意思尊重について

先日、利用者とご家族の意見が対立し、ケアマネジャー(介護支援専門員)である私が板挟みになってしまう場面がありました。利用者の希望とご家族の要望が食い違っているとき、どのように対応するのが望ましいのでしょうか?

■執筆者/専門家

古畑 佑奈

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/19

社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員 特別養護ホーム生活相談員、訪問介護事業、地域包括支援センターにて介護支援専門員の経験あり。 現在は、デイサービス管理者として勤務。 地域でのネットワーク活動では事務局として「死について語る会」や「3大宗教シンポジウム」など幅広いテーマの勉強会やイベントを企画・運営の経験がある。 すきな食べ物はラーメン。

利用者と家族の意向が違うときの対応

利用者とご家族の意見が違うと、「どう調整したらいいのだろう」と悩むことがあります。どちらの気持ちも分かるからこそ、ケアマネジャーや介護職員が板挟みになってしまうのだと思います。

そのような場合、私は「ニード」を整理することが大切だと考えています。

■支援の中心は本人の意思と希望

例えば、利用者は「今まで通り自分でやりたい」と希望しているのに、ご家族は「危ないから、できることでも職員に任せてほしい」と考えているケースがあったとしましょう。

ご家族からすると、転倒や事故を心配するのは当然です。一方、利用者には、「自分でできることまで取り上げられたくない」「まだ自分にはできることがある」という思いがあるかもしれません。そのため、「家族が心配しているから」とご家族の意向だけで支援方針を決めてしまうと、本人の思いや希望が十分に反映されなくなることがあります。

そうならないためにも、まずは本人に「なぜそのようにしたいのか」と、思いの背景まで丁寧に確認することが大切です。

ケアマネジャーには「本人の思いを代弁する」役割がある

本人の意向を確認したら、その思いを周囲に伝えていくこともケアマネジャーの大切な役割です。これはアドボカシー(権利擁護)にもつながります。

■アドボカシー(権利擁護)とは何か

アドボカシーとは、「本人の意思や権利を尊重し、その人の思いや希望が適切に周囲へ伝わるよう支援すること」です。例えば、本人が「できることは自分でやりたい」と話しているのであれば、その思いを「本人の希望」として支援チームに共有する必要があります。

■意思決定支援と代行は異なる

ここで注意したいのは、アドボカシーの本質が「本人に代わって決めること」ではなく、「本人が意思を表明し、意思決定できるよう支援すること」にある点です。そのため、ケアマネジャーは必要な情報を周囲に伝え、選択肢を整理しながら、本人が自分で意思決定できるように支えることが大切です。

ご家族の意見も「なぜそう思うのか」を聞く

もちろん、ご家族の意向も大切にします。ご家族には、「本人には無理をしてほしくない」「できるだけ安全に過ごしてほしい」「自分たちが支えられる範囲には限界がある」など、さまざまな思いがあります。そうした思いを尊重するためにも、「本人の希望と違うから」と否定するのではなく、「なぜそのように考えているのか」と背景を聞いてみましょう。

■意見が対立しているようで共通点がある場合も

すると、本人とご家族の意見が対立しているように見えても、根底には「安心して過ごしたい(過ごしてほしい)」という共通した思いがあることに気づく場合があります。本人の希望も、ご家族の要望も、まずは一度受け止める。そのうえで、それぞれの背景を整理していくことが大切です。

「どちらを優先するか」ではなく、方法を考える

意見が一致しないとき、「本人の希望を通すか、家族の要望を通すか」という二択で考えると、どうしても誰かが我慢することになります。そうしたときに持っていたいのが、「本人の希望を実現しながら、ご家族の不安を減らす方法はないか」と考える視点です。

■安全を確保しながら希望を実現する工夫

例えば、本人が自分でやりたいことについては、全てを禁止するのではなく、安全に行える方法を検討します。あるいは、必要な部分だけ見守ったり、環境を整えたりすることで、「自分でやりたい」という思いを守れる場合があります。

「できる・できない」だけで考えるのではなく、「どうすればできるのか」を考えることが、ケアマネジャーや介護職員には大切なのだと思います。

一人で抱え込まず、多職種で考える

それでも意見がまとまらない場合は、ケアマネジャーや介護職員だけで抱え込まないことも重要です。サービス担当者会議などを活用して、本人の意向やご家族の不安、ほかの専門職の見立てを共有してみましょう。

本人の思いを軸にしながら、「安全面ではどうか」「どんな支援があれば希望を実現できるか」などを多職種で考えると、新しい方法が見つかることがあります。

意見が違うことは、決して悪いことではない

利用者とご家族の意向が一致しないと、ケアマネジャーとして「調整しなければ」と焦りを感じることがあります。けれど、意見が違うこと自体は問題ではありません。大切なのは、それぞれの意見の背景にある思いを知り、その中で「本人が本当に大切にしたいことは何なのか」を見失わないことです。

■ケアマネジャーと介護職員に求められる姿勢

ケアマネジャーや介護職員の役割は、本人の意思を尊重しながら、家族の不安にも配慮し、より良い方法を一緒に探していくことです。本人とご家族双方の意見を丁寧に聞きながら、本人の意思と権利を中心に、ご家族の状況や支援上の課題にも配慮し、より良い方法を一緒に探していくことが大切です。そして、本人の声が小さくなってしまったときには、その声をもう一度チームにつなぐ必要があります。

私は、それがケアマネジャーに求められるアドボカシーであり、介護職員にも大切にしてほしい視点だと考えています。

■本人らしい生活を支えるために

「どちらの意見を採用するか」ではなく、「本人が望む生活に近づけるために、私たちに何ができるか」。意見が食い違ったときに、その問いに立ち返ることが、本人らしい生活を支える第一歩になるのではないでしょうか。

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社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員

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