マイナビ医療福祉キャリア
AIが介護職の仕事に与える影響とは?明確になる人の役割も徹底解説

AIが介護職の仕事に与える影響とは?明確になる人の役割も徹底解説

AIの進化によって「仕事が奪われる」という不安が語られる今、介護の現場ではまったく異なる変化が起きています。記録や事務といった業務はAIが担う一方で、人にしかできない役割である「判断する力」や「察する力」の価値が、これまで以上に浮き彫りになっているのです。AI時代において、介護という仕事はどのように変わり、何が専門性として残るのか、その本質に迫ります。【執筆者/専門家:伊藤 浩一】


\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職・ヘルパー」の求人を見る

本日のお悩み:AIによる介護職への影響は?

昨今はさまざまな職業でAIの導入が進んでおり、将来的にはAIによってなくなる仕事も出てくると言われています。介護職にはどのような影響が考えられるでしょうか?

AIは介護職の仕事を奪うのか?

執筆者/専門家

伊藤 浩一

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/14

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

回答

近年、AIの進展により多くの仕事が変化し、「人の仕事が奪われるのではないか」という議論が広がっています。しかし、介護の現場で起きている変化は、それとは本質的に異なります。キーワードは「代替」ではなく「再定義」です。つまり、仕事がなくなるのではなく、「人が担う役割がより明確になっていく」という変化です。

AIが得意とする業務領域とは

介護業務は、細分化すると数百の業務に分けられると言われています。その中で、記録、ケアプラン、議事録といった文章作成や、情報整理などの領域は生成AI(以下、AI)が得意とする分野であり、今後ますます効率化が進んでいくでしょう。これは現場にとって大きなメリットであり、これまで多くの時間を費やしていた間接業務の負担を軽減することにつながります。

AI時代に人が担うべき役割とは

ここで重要になるのは、「仕事が奪われるのではないか」ではなく、「人は何を担うのか」という問いです。その答えは明確で、「判断すること」です。

AIはあくまで“案”を出す存在です。その内容が適切か、求めるレベルに達しているか、思い描いていたもの(ビジョン)と合致しているかなどを、最終的に判断するのは人の役割です。

教育現場で起きているAIとの向き合い方の変化

介護教育にも影響が出始めている

私は介護福祉士養成校で教壇に立っていますが、ここ2〜3年で教える内容が変化しました。その変化は、AIとの向き合い方です。理由は、介護実習の記録をAIで作成するという事案が、実際にあったためです。もちろん、今後そうした記録はAIが担っていく業務となるでしょう。

判断力を養う前にAIを使うリスク

しかし、判断するのは人です。判断力を養う段階でAIの利用が目的化すると、本人の理解が十分に深まらないまま文章をまとめてしまうおそれがあります。

AI時代に必要な「書く力」と「伝える力」

そのため、学生には、「学生時代は新聞や小説などの良い文章を読むこと。とにかく自分で書くこと。アナログかもしれませんが、この訓練をしっかりしないと、仕事に就いてからAIが書いた文章を判断できない」と口をすっぱくして伝えています。

なぜ介護業務で文章を書くのか

そもそも、なぜ介護の業務で文章を書くのか?それは「伝えるため」です。例えば、申し送りもその一つです。ご利用者の望む暮らしを支えるために、どの情報を拾い、どのように解釈し、どう伝えるかが重要です。

AI活用に必要な情報設計力

正しく伝えるために、AIが文章を作成するための材料をどうそろえ、AIが提案した文章をどう判断するか。そうした作業が、これからの介護職の専門性を大きく左右していくはずです。

介護職の本質「察する力」とは

情報を拾う力が専門性を決める

ではここで、「情報を拾う」という点にスポットを当ててみましょう。
「この人はどんな思いで生きてきたのか」
「何を実現したいのか」
「どんな生活を送りたいのか」

これらの問いに向き合うとき、私たちは言葉だけを見ているわけではありません。表情、声色、間、空気感といった、言語化されない多くの情報を総合的に感じ取りながら、考えをめぐらせています。この「察する力」は、現時点では人が強みを発揮しやすい領域の一つです。

介護環境の地域差を完全解説|格差の原因と今後の生存戦略【2026年最新版】 | ささえるラボ

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/articles/1421

介護環境の地域差が深刻化する中、地方と都市部で何が起きているのかを専門家が解説。格差の原因から今後の戦略(M&A・ICT・人材活用)まで網羅的に理解できる実践ガイド。【執筆者/専門家:山本 武尊】

介護は「考える仕事」である

\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職・ヘルパー」の求人を見る

現場の本質は作業ではない

実際に、受講者から「介護はこんなに考える仕事だとは思わなかった」という感想を聞くことがあります。外から見ると、身体介護は「作業」が中心の仕事に見えるかもしれません。しかし、現場の本質は「考え続けること」にあります。

常に問い続ける仕事

つまり、一つひとつのケアに対して、「なぜこれをするのか」「これで良いのか」と問い続け、その人にとっての最適を探り続けるのが介護の仕事なのです。

意思決定につながる力

AI時代になると、この「考える力」の価値はさらに高まります。AIは過去のデータをもとに提案を行いますが、個別事情への当てはまりには限界がある場合もあります。一方で、介護の現場には、正解が一つではない場面が数多く存在します。だからこそ、最終的な意思決定は人に委ねられ、その判断の根拠となる情報を察する力がより求められるのです。

AI時代に必要な3つの力の磨き方

結論:異なる価値観に触れること

では、「判断力」「察する力」「考える力」はどうやって磨いていけばよいのでしょうか。大事なのは、「異なる考えに触れること」です。多様な価値観、文化、経験を持つ人と関わることで、自分の視野を広げ、判断の質を高められます。外国人材との協働も、その大きな機会の一つでしょう。「当たり前」が異なるからこそ、新たな気づきやより良いケアの可能性が生まれます。

AI活用で失敗しないための考え方

そして、もう一つ強調すべき視点があります。それは、「AIもあくまで手段である」ということです。
・何を解決するためにAIを活用するのか。
・どの業務を変えたいのか。
・どのような状態を目指すのか。

これらが十分に設計されていない場合、AIの効果が得られにくくなることがあります。

AI導入が目的化することのリスク

導入そのものが目的化してしまえば、現場に混乱を生み、使われないまま終わってしまう可能性すらあります。だからこそ、「課題起点」で考え、「目的から逆算して活用する」という視点が不可欠なのです。

AI活用における情報管理の重要性

AIの活用においては、ほかにも注意すべき点があります。特に重要なのが「情報の扱い」です。AIに入力した情報がどのように扱われるかを理解せずに利用すると、意図せず情報漏洩につながるリスクがあります。利用者の個人情報や家族情報、施設内の機密情報などを入力することには、常に慎重でなければなりません。

安全に活用するための基本ルール

原則として、個人が特定される情報は入力しない、あるいは匿名化・抽象化して扱うなどの配慮が求められます。

組織として求められるAI活用体制

最終責任は人にある

AIはあくまでツールであり、最終的な責任は人にあります。これからの現場には、組織として活用ルールやガイドラインを整備し、「安全に使う力」を高めていくことが強く求められるでしょう。

まとめ:AI時代における介護職の未来

AIは介護職から仕事を奪う存在ではなく、「人にしかできない仕事をより際立たせる存在」となります。また、間接業務の効率化によって生まれた時間は、利用者と向き合う時間や、より深く考える時間へと転換されていきます。

介護の未来はより「人間らしい仕事」へ

AI時代の介護職は、人にしかできない仕事の一つである「判断すること」を実践する専門職であり、「人の人生に向き合い続ける専門職」となります。そして、その根底にあるのは、「人を理解しようとし続ける姿勢」です。

AIが進化する時代だからこそ、人の力の本質がより問われる。介護は、その最前線にある仕事と言えるのではないでしょうか。

あわせて読みたい記事

介護の資格(王道〜キャリアアップ〜専門特化まで)難易度・費用・期間など徹底解説【2026年版】 | ささえるラボ

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/articles/1424

介護資格はどれを選べばいい?本記事では介護資格32種類を一覧で比較し、難易度・費用・期間・キャリア別にわかりやすく解説。未経験からキャリアアップまで自分に合った資格が見つかります。【執筆者:ささえるラボ編集部】

介護職は誰でも受かるって本当?介護職の面接で落ちる人と受かりやすい人の特徴も解説! | ささえるラボ

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/articles/1276

介護職は誰でも受かると聞いたのにいざ面接を受けてみたら不採用…。そもそも介護職は誰でも受かるのか?面接で採用されやすい人とされづらい人の特徴も解説します!【執筆者/専門家:伊藤 浩一】

この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

関連する投稿


高齢者の夏バテ対策完全ガイド|脱水・食欲低下を防ぐ介護現場の実践ポイント

高齢者の夏バテ対策完全ガイド|脱水・食欲低下を防ぐ介護現場の実践ポイント

高齢者の夏バテは脱水や食欲低下だけでなく、室温管理や睡眠環境も大きく影響します。本記事では、高齢者の夏バテの原因や予防法、水分補給・食事の工夫、脱水のサインまで介護現場で役立つ実践ポイントを解説します。【執筆者/専門家:脇 健仁】


新人介護職員の独り立ちまでの期間は?早く成長する人の特徴と仕事を覚えるコツを解説

新人介護職員の独り立ちまでの期間は?早く成長する人の特徴と仕事を覚えるコツを解説

介護施設に勤務する新人介護職員の方から寄せられたお悩みです。介護福祉士や社会福祉士、ケアマネジャーの資格を持つ専門家の後藤晴紀さんにご回答いただきました。新人介護職員が独り立ちするまでの期間の目安や、成長を早めるためのポイントについて詳しく解説していきます。【執筆者/専門家:後藤晴紀】


LIFEフィードバックの読み解き方と活用実践|科学的介護を現場の変化につなげるには?

LIFEフィードバックの読み解き方と活用実践|科学的介護を現場の変化につなげるには?

介護施設で働く方からのお悩みです。現場目線での業務改善に精通している後藤晴紀さんに、LIFE(科学的介護情報システム)フィードバックを現場で生かすためのポイントについて、詳しく解説していただきました。【執筆者/専門家:後藤晴紀】


【2025年義務化】介護施設の熱中症対策とは?対象条件・3つの義務・罰則まで社労士が解説

【2025年義務化】介護施設の熱中症対策とは?対象条件・3つの義務・罰則まで社労士が解説

介護施設で働く方からのお悩みです。職場での熱中症対策義務化に伴い、施設管理者や職員の方が取り組むべき具体策について、介護業界特化型の社会保険労務士として活動する山本武尊さんに、詳しく解説していただきます。【執筆者/専門家:山本 武尊】


医療・介護・福祉職のための給与明細の見方│手当の種類から控除の種類まで徹底解説

医療・介護・福祉職のための給与明細の見方│手当の種類から控除の種類まで徹底解説

医療・介護・福祉職向けに給与明細の見方を徹底解説。勤怠・支給・控除の仕組みから、手取り額が変わる理由、職種別のチェックポイントまでわかりやすく紹介します。【執筆者:ささえるラボ編集部】


マイナビ医療福祉キャリア 閲覧ランキング
【北海道・東北】
【関東・甲信越】
【北陸・東海】
【関西・中四国】
【九州・沖縄】

最新の投稿


高齢者の夏バテ対策完全ガイド|脱水・食欲低下を防ぐ介護現場の実践ポイント

高齢者の夏バテ対策完全ガイド|脱水・食欲低下を防ぐ介護現場の実践ポイント

高齢者の夏バテは脱水や食欲低下だけでなく、室温管理や睡眠環境も大きく影響します。本記事では、高齢者の夏バテの原因や予防法、水分補給・食事の工夫、脱水のサインまで介護現場で役立つ実践ポイントを解説します。【執筆者/専門家:脇 健仁】


第204話 「食事介助」/ほっこり介護マンガ

第204話 「食事介助」/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


新人介護職員の独り立ちまでの期間は?早く成長する人の特徴と仕事を覚えるコツを解説

新人介護職員の独り立ちまでの期間は?早く成長する人の特徴と仕事を覚えるコツを解説

介護施設に勤務する新人介護職員の方から寄せられたお悩みです。介護福祉士や社会福祉士、ケアマネジャーの資格を持つ専門家の後藤晴紀さんにご回答いただきました。新人介護職員が独り立ちするまでの期間の目安や、成長を早めるためのポイントについて詳しく解説していきます。【執筆者/専門家:後藤晴紀】


介護リーダーが抱えやすい悩みとは? 現場で役立つ課題解決のコツ

介護リーダーが抱えやすい悩みとは? 現場で役立つ課題解決のコツ

介護施設で介護リーダーを務める方からのお悩みです。ケアマネジャーやデイサービス管理者など、介護現場でさまざまな職務を経験してきた専門家の古畑佑奈さんに、介護リーダーが抱えやすい悩みとその対処法について、詳しく解説していただきましょう。【執筆者/専門家:古畑佑奈】


第203話 「熱中症対策」/ほっこり介護マンガ

第203話 「熱中症対策」/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


マイナビ医療福祉キャリア
「マイナビ医療福祉キャリア」は、医療・福祉・介護職に特化した中途、パート向け求人サイトです。
医師、看護師、薬剤師、歯科医師、介護職・ヘルパー、保育士、リハビリ職、技術職、事務職など、専門性の高い職種に特化した求人情報を多数掲載しています。
雇用形態や詳細条件での求人検索もできるのであなたにぴったりな職場が見つかります!
【職種から求人・転職情報を探す】