介護現場のリーダーの育て方、向いている人とは?

介護現場のリーダーの育て方、向いている人とは?

介護業界では、外国人や専門職以外の多様な人材が活躍しています。多様な人材へのマネジメントがより一層必要となっていくなかで、リーダーに求められる力量も大きいでしょう。リーダーに必要な能力とリーダー育成のポイントについて、後藤先生に解説いただきました。 【執筆者:後藤 晴紀 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士】


目次

介護現場のリーダーの育て方、向いている人とは?

介護現場のリーダーの育て方、向いている人とは?

■執筆者

この記事は、後藤さんが執筆しました♪
資格:介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士

後藤 晴紀

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/9

・けあぷろかれっじ 代表 ・NPO法人JINZEM 監事 プロフィール▶ 『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。 そんな想いから、『生ききる』為の支援の実践者を養成するため『けあぷろかれっじ』を設立。 介護職による介護職の為の有志団体として、セミナーを中心に活動しています。 ご本人やご家族、介護に関係のない一般の方々の想像を超える実践を目指し、現場への提案や助言、実践を行っています。

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今後、介護業界はより一層、多様な人材が働く場へと変わっていきます。現在リーダーとして活躍している方はもちろんですが、今後リーダーになりたいと思っている方も、キャリアアップしていくためにはより一層のリーダーシップとマネジメント能力の向上が必要となるでしょう。

「リーダーが求められていること」や「介護現場での次世代のリーダーを育てるポイント」について解説していきます。おそらく皆さんの施設でも関心が高いテーマではないでしょうか。ぜひ、お役立てください。

はじめに 介護業界ではリーダー育成が重要なテーマになっている

介護業界ではリーダー育成が重要なテーマになっています。その背景についてまずは説明していきます。

■介護業界の人材不足が加速している

皆さんも既にご存じの通り、2025年には約243万人の介護職員が必要とされています。
※出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」

ただ2021年時点での介護職員の総数は214.9万人となっており、現在も人手不足が解消されていない状況となっています。
※出典:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」

さらに、追い打ちをかけるように2022年度には、離職した人が新たに働き始めた人を上回り、初の減少となりました。 この一つの要因として、飲食・小売・製造業などでの賃上げが広がり、物価高騰を受けてより良い待遇を求めて転職する人が増えたと報じられました。私は、とても深刻な状況であると危惧しています。
※日本経済新聞「介護就労者、初の減少」(新聞記事に遷移します。)

■介護福祉職としての働き方改革を行っている

そのような状況に対して、国も様々な施策を打ち出し、介護福祉職としての働き方改革を行っている状況です。

●令和元年度:介護職機能分化等推進事業
多様な人材の参入を促し、機能分化等の取組を支援

・令和2年度:介護職チームケア実践力向上推進事業
リーダー職の育成等によるチームケアの実践を推進する取り組みを支援

●令和3、4年度:介護現場における多様な働き方導入モデル事業
リーダー的介護職員を育成しつつ、多様な働き方を導入する取り組みを支援

■介護現場は、多様な人材が働く場になる

上記から、何を伝えたいのかというと、これからの介護現場は「多様な人材が働く場になる」ということです。

限られた介護人材で多様化・複雑化する介護ニーズに対応するため、業務の機能分化を行い、「介護助手」をはじめとする様々な働き方を取りいれています。
このような取り組みは、事業運営が持続可能となるように対策を強化していく必要性のための打ち手であり、そのマネジメントの役を担うのが、現場の中核を担うリーダー達となります。

■リーダーになることも視野に入れながら、自己研鑽していこう

外国人介護職の増加や専門職以外の多様な人材が介護業界で活躍するためには、多様な人材育成も求められてくるということです。
現場でキャリアアップをしていくためにはリーダーとしての役職は、必要な経験だと思いますが、誰しもができる役割ではないと考えています。

しかし今は難しくても、ご自身の研鑽を重ね成長していくことで、リーダー職として活躍できる機会が持てることも事実です。

ご自身に必要なスキルや能力には何が必要なのか、来るべき時に備えるために、後術に関しても参考にしていただければと思います。

リーダーとして活躍している人の特徴

そんな現状を踏まえたうえで、「 リーダーとして活躍している人の特徴」「 リーダーの育成のポイント」について、私の経験も踏まえて、お応えさせていただきます。
まず、どんな人がリーダーとして活躍しているのかについてですが、一般的には、以下のような特徴を持つ人がリーダーとして求められると考えています。

*リーダーとして活躍している人の特徴*
1.高度な知識・技術を有する実践者である
2.根拠に基づいた技術の指導者である
3.コミュニケーション能力に長けている
4.傾聴力が長けている
5.業務内容を管理し品質を保つための確認行為ができる
6.スタッフから相談連絡報告を受けた内容への反応力が高い
7.問題解決能力が高い
8.チームワーク能力に長けている
9.継続した学習意欲が保たれている
10.マルチタスク処理能力が長けている
11.ストレスマネジメント能力に長けている
12.その他、リーダーとして活躍するために携えてほしい能力

■1.高度な知識・技術を有する実践者である

リーダーがマネジメント能力を発揮するためには、状況に応じた判断行為や一般職員への確認行為を行っていくことになります。その判断をするための「技術」「知識」「経験」が必要になります。

経験が浅いリーダーは、スタッフが求めている適切な判断行為ができず、正しいことが行えているのかの確認も不足してしまいがちです。
そのような状況になると、現場が混乱してしまい、職員からの信頼も失ってしまう可能性があります。よって、実践者としての知識や技術も、一定の能力は求められると考えます。

■2.根拠に基づいた技術の指導者である

高度な知識・技術を持つ実践者であれば、判断や技術の根拠となる知識を持っていると思いますが、一般職員には理解できていない場合が多くあります。
そのため、「やってみせて、させてみせて」だけでは育ちません。

その技術には、どのような裏付けがあるのかの根拠を知識を基に伝えていく必要があります。

職員の育成には「知っている状態」「実践できる状態」「伝えられる状態」となるように、意識的な説明が必要となります。


それが、リーダーの説明力にも繋がっており、実践できているリーダーは活躍の場を広げていると思います。

■3.コミュニケーション能力に長けている

介護現場では、ご利用者やご家族、職員、他の専門職など、さまざまな関係者と円滑にコミュニケーションをとる必要があります。
それぞれの立場やニーズを理解し、適切な言葉や態度で伝えることができる人がリーダーとして活躍しています。

■4.傾聴力が長けている

コミュニケーション能力とも関連がありますが、スピーカータイプのリーダーは職員とのラポール(信頼関係)が形成されておらず、適切なマネジメントが行えない印象があります。
あくまで私の主観となりますが、傾聴(アクティブリスニング)重視のリーダーのほうが、ラポールを形成しやすく、職員からの承認も得られやすいように感じています。

部下の悩みや課題を積極的に引き出し、聴くことで解決策も見えてくるため、適切な助言を伝えられると思います。
+α 相談や質問の対応のワンポイントアドバイス

相談や質問をする際に「わからないので教えてください。」と答えを求めてくる職員さんは割と多いのではと思います。

そのようなときは、
・「自分ではどのように考えているのか?」
・「どう行動しようとしているのか?」などを引き出すようにしましょう。

困りごとを解決してあげたいという優しい気持ちもわかりますが、すべての答えを伝えてしまうとその職員さんは自分で考えることをやめてしまうかもしれません。
そして、「指示を出されるまで行動しない」受け身の姿勢となってしまう可能性があります。

相談や質問を受ける際には、「私は○○と考えますが、どうですか?」と、ご自身の考えを伝えてもらうように、考えてから質問・相談をする癖をつけてもらうようにしましょう。

■5.業務内容を管理し品質を保つための確認行為ができる

処遇や接遇を向上し、ケアの質を維持向上させていくために日々「業務上の様々な決まりごと」は更新されていきます。
例えば、
・上司からの周知事項
・会議での決定事項
・スタッフ個々の目標や相談を受けて指示をした内容
・依頼している書類やアンケート提出物の対応 など

このようなときに現場でよく耳にするのは、「言ってあります。」「伝えました。」などの一方通行の指示命令の伝達行為です。
「言ったから終わり」「伝えたはずのことを再度聞いた人が悪い」このような状況になっていることはありませんか?
確かに伝えることは大切ですし、聞いていたのに対応していない人や期日が守れない人は、仕事の進め方がよくない人と思ってしまいがちですよね。

しかしながら、活躍しているリーダーは一味違います。
必ずと言っていいほど、適切な間合いで「確認行為」を挟んでいます。


「こないだ伝えた○○どうなっている?」
「実際にやってみて、わからなかったことはない?」
「決められた○○守れている?」など
メンバーのスタッフが期日を守れたり、決めごとを守れたりするように、適切な関わりを通して、誘導してくれています。
これが、品質の管理に繋がる確認行為となります。

■6.スタッフから相談連絡報告を受けた内容への反応力が高い

リーダーは職員からの相談を受けることがとても多いです。
また、会議で決まったことや確認をしてから対処すること、次回の会議での議案として上申することなどそれらの仕事を「後でやろう」と思ってしまうと、仕事がどんどん溜まっていきます。

それらが処理しきれず、停滞してしまうと、依頼や相談をした職員からは「動いてくれない」「何も変わらない」「言っても無駄」などの不満がたまっていき爆発してしまうかもしれません。

活躍しているリーダーは溜めません。
停滞もさせません。

相談連絡報告を受けた際に、「すぐに行動」に移し、先ほどの確認行為と同様に情報を集め対処していきます。 その反応力が高ければ高いほど、問題が積みあがっていかず、常に新しい依頼の準備態勢に入っています。この反応力は活躍しているリーダーに共通している特徴でもあります。

■7.問題解決能力が高い

介護現場では、予期せぬ事態やトラブルに対応することが多くあります。
冷静に状況を分析し、効果的な解決策を提案し、実行することができる人がリーダーとして活躍しています。

■8.チームワーク能力に長けている

介護現場では、ひとりで仕事をすることはほとんどありません。

特にリーダーは、職員の能力や役割を把握し適切に指示・助言・仕事を与えることができる人が求められます。また、職員の意見や感情を尊重し、協力し合う雰囲気を作ることができる人が活躍しています。

■9.継続した学習意欲が保たれている

介護現場では、常に新しい知識や技術を学ぶ必要があります。

自ら積極的に学び、自己改善を図ることができる人がリーダーとしては求められます。また、職員にも学ぶ機会や環境を提供し、成長を促すことができる人が活躍しています。

■10.マルチタスク処理能力が長けている

リーダー職員は、自身の業務だけではなく、ご利用者のこと、多職種のこと、部下のこと、期限が決められた提出書類等、一般職員と比べると多くのタスク処理能力が求められます。
はじめのうちは、その業務量に驚かれるかもしれませんし、処理ができるようになるのか、不安に思うかもしれません。

人は初めてのことや経験がないことには不安を覚えるものです。

正しい順番と方法を身につけることで、しっかりとその業務を行うことができるようになります。
業務に追われるよりも、業務を追いかけられるように適切な優先順位を見極め、その日にできることはその日のうちに収めることで、ご自身のストレスマネジメントも行えるようになると思います。

■11.ストレスマネジメント能力に長けている

リーダーとして活躍しているスタッフは、いつも気力に満ちている印象があります。
相談しやすい雰囲気や、いつも笑顔で周囲への配慮ができていますね。
ただ、リーダーといえど、365日24時間常に一定の精神状態でいられる人はいません。むしろ常にストレスを抱えている人のほうが多いのではないでしょうか。

リーダーとして活躍している人の多くは、ストレスがないのではなく、ストレスとの付き合い方が上手な人が多いです。業務外や、プライベートの時間でストレスをうまく発散できることで、業務でのパフォーマンスを最大化できるメンテナンスも重要ということですね。

ストレスに耐えるよりも、ストレスをため込まないことを意識していきましょうね。

■12.その他、リーダーとして活躍するために携えてほしい能力

そのほか、リーダーとしてより一層の飛躍をするために鍛えてほしい能力は下記です。

1.常識にとらわれない妄想力
2.時代変化に対応するための柔軟性
3.当たり前を疑える、気付ける気づき力
4.相手を尊重しアサーティブに伝えられる言葉の選択力

ぜひ、上記も意識してみていただけますと幸いです。

リーダー育成のポイント

次にどのように育てるのかについて、解説をしていきます。

■理念を言語化するためのロードマップの共有(事業計画の共有)

リーダー達には、自分たちが行っている業務や事業について「誰のために、何のために実践しているのか」を常に言葉で伝えてもらうようにしています。
その中心にあるのが、ご利用者であり、ご家族であり法人理念です。

施設では、ご利用者・ご家族のためにケアを実践することは得意なのですが、理念を実現するためのイメージがわかりにくいスタッフが多いと思います。

そこで、私の施設では、リーダー達および職員たちが理解がしやすいように「自分たちが実践している仕事が、どのように理念を実現していくための手段となっているのか」というロードマップを作成しています。
そうすることで、常に自分たちの行っている業務を意識でき、能動的、積極的にスタッフを導けるようになります。

■ロールモデルとしての示唆

リーダーとしての資質やスキルを持つ人を現場で見習うことができるようにすることが重要です。

例えば、先輩や上司が、コミュニケーション・問題解・チームワークなどの場面でどのように行動するかを具体的に示すことです。
また、自分の経験や考え方を、後輩や部下に積極的に共有することも重要です。


私の施設でも、人事異動の際は次期リーダーとして申し出のあった育成人材を配置しています。
その際は、目的を持った人事である旨を、双方に伝え意識を高めておくことを行っています。

また、会議や委員会でも、育成の視点を様々な合議体に持たせるために、委員長の元に育成人材を配置し協同の機会を設けることを行っています。

■フィードバックと評価の提供

リーダーとしての成長を促すためには、定期的にフィードバックと評価を提供することが必要です。

具体的には日常的に仕事の内容や成果について、褒めたり、励ましたり、アドバイスしたりすることです。また、定期的に目標や課題について、振り返りや検証を行うことが必要です。

■リーダーのモチベーションを高めるための1ON1

多くの事業所では半期に1度程度の面談の機会を設けていると思いますが、 私の施設では「毎月リーダーとの面談」を実施しています。

常に目標を設定し、目的を持った1ヶ月の積み上げがリーダーの経験となり、反応力や行動力が明確に高まります。
具体的なリーダーの成果も毎月共有できるので、認めて褒める機会も格段に高まります。

その結果、積極的に自身の現場に1ON1を取り入れようと、毎月の部下面接を始めるリーダーも増えてきました。このような積極性を育める面接技法は積極的に取り入れられることをお勧めします。

面談を始める前のポイントは、自分たちの「相互理解のためのアセスメント」です。
介護職員はご利用者のアセスメントの機会は多くありますが、同僚や上司・部下のアセスメントは経験がないと思います。
出身地から成育歴、将来の夢や10年後の自分などお互いに自分を開示していきます。

そうすることで、よりお互いを知っている状態へと関係性のステージが変化します。自分を理解してくれている理解者が増えるということは、職員の心理的安定の向上が得られ人材育成のためのラポール(信頼関係)が形成しやすくなるポイントにもなると思っています。

■研修や教育の機会の提供

リーダーとしての知識や技術を高めるためには、研修や教育の機会を提供することが有効です。

例えば、外部の専門家や組織から、最新の情報やノウハウを学ぶ機会を設けたり、内部で、職員同士の経験や知識を交換することも有効でしょう。

■会議での成功体験と課題の共有

わたしの施設では、リーダー会議という会議があります。

リーダーたちの進捗を確認したり、共有事項や周知事項、運営からの伝達事項を確認するなど現場での伝達事項が中心となります。
その中に組み込まれているものとして、成功事例と課題の共有という時間があります。

それぞれのリーダーが成功や課題を共有してくれることで、間接的に他のリーダーたちの成功体験として蓄積されていきます。直接的な経験と同様、この間接体験もリーダー育成にはとても重要な意味があると考えています。

■さいごに

以上が、私が経験してきたことや、現在も実践しているリーダー育成のポイントです。

介護現場での次世代のリーダーを育てることは容易ではありませんが、日々の積み重ねや関りが重要で、私の使命でもあると感じています。

リーダーに必要な能力や育成のための取り組みは、もちろん全て備わっている必要はありませんし、実際に完璧に備わっている人もいないでしょう。

ご自身の得意な能力を伸ばしたり、必要なスキルを知ったり、苦手な能力を引き上げるヒントにしたりと、できそうなことから優先順位をつけて取り組まれていただければ嬉しいと思っております。

共に学び、悩み育んでいきましょう!!

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https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/42

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この記事のライター

・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士

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