高齢者がエアコンを嫌がる理由と対策とは?熱中症を防ぐために介護職員が実践したい声かけのポイント

高齢者がエアコンを嫌がる理由と対策とは?熱中症を防ぐために介護職員が実践したい声かけのポイント

介護現場で働く職員のかたからのお悩みです。訪問介護、グループホーム、居宅介護⽀援事業所などに従事した経験を持ち、介護関連のセミナーや講演に数多く登壇している羽吹さゆりさんにご回答いただきました。本記事では、高齢者のかたがエアコンをいやがる理由と対策について、詳しく解説していきます。【執筆者/専門家:羽吹 さゆり】


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本日のお悩み:エアコンを嫌がる高齢者への対応

高齢者のかたはエアコンの利用をいやがることがありますが、夏場は熱中症が心配です。適切にエアコンを利用してもらうには、どうすればよいでしょうか?

高齢者がエアコンを嫌がるとき介護職員が知っておきたいこと

■執筆者/専門家

羽吹 さゆり

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/7

・(有)⽻吹デザイン事務所介護事業部アモールファティ代表 ・アモールファティスクール⻑ 介護福祉⼠/介護⽀援専⾨員/介護技術指導員/⽇本語教員/社会科教員 介護職員実務者教員/社会福祉主事任⽤ 理論と経験に基づく「優しく丁寧に美しい介護」を理念に実践的な介護技術研修/コミュニケーション研修及び介護離職防止の為一般企業様向けに「介護セミナー」を実施しています。

本格的な夏を迎えるにあたり、施設での熱中症対策は非常に重要です。しかし、現場で働く皆さんのなかには、次のような悩みを抱えているかたも多いのではないでしょうか?
・熱中症になると危ないからエアコンをつけましょう、と何度伝えても消されてしまう。
・「電気代がもったいない」「体にあわない」と言われて、どう声をかけたらよいか分からない。

■高齢者は室内でも熱中症になるリスクがある

高齢者の中には、「エアコンは体に悪い」「冷えるから苦手」「昔は使わなくても夏を越せた」「電気代がもったいない」など、さまざまな理由からエアコンの使用をいやがるかたが少なくありません。けれど、近年の夏は気温や湿度が非常に高く、室内にいても熱中症になる危険があります。

■まずは拒否する理由に寄り添うことが大切

特に高齢者は、加齢によって暑さやのどの渇きを感じにくくなる(感覚機能が低下する)ため、「自分では大丈夫だと思っていたのに、気づかないうちに熱中症になっていた」というケースも多く見られます。それを考えれば、「エアコンを使ってほしい」というのは、ご利用者の命を守りたいからこその思いです。

とはいえ、ここで大切なのは、「熱中症になるのでエアコンをつけましょう」と正論を押し通すことではありません。まずは、「ご利用者がなぜ嫌だと感じるのか」を考え、その思いに寄り添うことから始めてみましょう。

高齢者のかたがエアコンをいやがる理由

ご利用者がエアコンを拒まれる背景には、そのかたが歩んできた生活の歴史や価値観、身体的な変化が深く関係しています。一方的にこちらのルールを押し付ける前に、まずはエアコンをいやがる理由に目を向けてみましょう。

■昔からの生活習慣や価値観が影響している

■生活歴と価値観(時代背景)

エアコンが普及する前は、窓から入る風や扇風機だけで夏を過ごしていました。そうした時代を生きてこられた方にとって、「昔は平気だった」「エアコンなしでも大丈夫」という感覚はとても自然なものです。

■節約意識から利用をためらうケース

また、長年「節約」を心がけてつつましく生活してこられた方ほど、エアコンを贅沢品だと捉えたり、「電気代を使うこと」に強い抵抗感を覚えたりする場合があります。

■身体的な不快感が理由になっていることもある

高齢になると、自律神経の働きやつま先の血流が低下しやすくなります。そのため、ご利用者の中には、「冷えると足腰が痛くなる」「風が直接当たると体がだるくなる」といった、身体的な不快感や痛みを抱えているかたも多くいらっしゃいます。

■エアコン拒否には本人なりの理由がある

これらを理解すると、ご利用者がただ頑固に拒否しているのではなく、ご本人なりの「正当な理由」があることが、見えてくるのではないでしょうか。

第1ステップ:思いを否定せずに受け止める

■信頼関係づくりを最優先に考える

高齢者支援においては、正しいことを伝える前に、安心して話を聞いていただける関係性(心理的安全性)を作ることがとても重要です。

■共感を伝える声かけの具体例

ご利用者にエアコンを拒まれたら、まずは以下のような言葉で、ご本人の思いを丸ごと受け止めてみましょう。
・「冷える感じが苦手なんですね、お体が痛くなるとつらいですものね」
・「そうですよね、昔はエアコンがなくても、心地よい風で過ごせましたものね」
・「電気代も気になりますよね。いつもまわりのことを気遣ってくださってありがとうございます」


■受け止めることで心が開きやすくなる

こうしたコミュニケーションを通じて、「分かってもらえた」「自分の気持ちを大切にしてくれた」と感じてもらえれば、心の緊張がほぐれ、その後の声かけも受け入れてもらいやすいはずです。

第2ステップ:否定ではなく情報共有の形で伝える

■熱中症リスクを分かりやすく伝える

しっかりと信頼関係の土台ができたら、次のステップとして、熱中症の危険性や体の変化について伝えましょう。この時も、「だから使ってください!」と説得するのではなく、「最新の情報を共有する」というていねいなスタンスを意識してください。
高齢者に伝わりやすい説明の例
・「いまは昔よりも地球全体の暑さが厳しくなっていて、夜でも気温が下がりにくいみたいなんです」
・「年齢を重ねると、体のメーター(センサー)が少しのんびりになって、暑さを感じにくくなることがあるそうです。だから、代わりに確認させてくださいね」
・「いまは外だけでなく、お部屋の中にいても熱中症になってしまうことが多くて、私たちも心配しているんです」


■I(アイ)メッセージで寄り添いながら伝える

このように、「あなたのために心配している」というメッセージ(Iメッセージ)や、客観的な事実をさりげなく添えることで、ご利用者のプライドを傷つけずにコミュニケーションが取れます。「少しだけエアコンをつけてみようか」という気持ちにもつなげやすくなるでしょう。

現場ですぐに実践できる「エアコン=不快」を和らげる工夫

言葉でのアプローチとあわせて、「エアコン=寒い・不快」という印象を和らげる工夫(環境づくり)を取り入れるとさらに効果的です。

高齢者の価値観を理解することが熱中症予防の第一歩

ご利用者の命を守るための声かけは、ときに根気がいるものです。何度も断られると、つい悲しい気持ちになったり、「どうして分かってくれないんだろう」と焦ってしまったりすることもありますよね。でも、それはみなさんが、目の前の命に対して一生懸命に向き合っている証拠です。

■ご利用者の人生に目を向けた関わりが大切

だからこそ、感覚のすれ違いで疲れてしまう前に、一歩引いて「このかたの歴史は何を語っているのかな?」と、そのかたの物語に耳を傾けてみてください。

■チームで安心して過ごせる環境づくりを進めよう

みなさんのやさしいひと言と、ていねいな寄り添いは、ご利用者が健康に夏を乗り切るための特効薬です。今年の夏も、チーム一丸となって、安心かつ心地よく過ごせる環境を作っていきましょう。

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この記事のライター

・(有)⽻吹デザイン事務所介護事業部アモールファティ代表
・アモールファティスクール⻑

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