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介護福祉のアウトリーチ徹底解説|必要性・メリット・具体例・注意点まで網羅

介護福祉のアウトリーチ徹底解説|必要性・メリット・具体例・注意点まで網羅

介護福祉におけるアウトリーチとは何かを完全解説。厚労省資料を基にメリット・施策事例・注意点を分かりやすく紹介。知らないと損する制度理解に役立つ内容です。【執筆者/専門家:脇 健仁】


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【本日のお悩み】:介護のアウトリーチとは?

介護福祉におけるアウトリーチが気になっています。どのようなものなのか教えてください。アウトリーチを行うメリットや注意すべきことなどが知りたいです。


アウトリーチとは何か

執筆者/専門家

脇 健仁

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/22

ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役 株式会社ゆりかご 代表取締役 茨城県訪問介護協議会 副会長 茨城県難病連絡協議会 委員 水戸在宅ケアネットワーク 世話人 茨城県介護支援専門員協会 水戸地区会幹事 茨城県訪問看護事業協議会 監事 水戸市地域包括支援センター運営協議会 委員 水戸市地域自立支援協議会全体会 委員 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 日本社会事業大学大学院 福祉マネジメント研究科修了(福祉マネジメント修士) 聖路加国際大学看護リカレント課程 認知症看護認定看護師課程 在籍中 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員・FP2級

アウトリーチとは、「手を伸ばす」「手を差し伸べる」という意味の言葉で、厚生労働省の資料では、介護福祉におけるアウトリーチを次のように説明しています。

厚労省が示すアウトリーチの正式な定義

「生活上の課題を抱えながらも自ら援助にアクセスできない個人や家族に対し、家庭や学校等への訪問支援、当事者が出向きやすい場所での相談会の開催、地域におけるニーズ発見の場や関係づくりなどにより、支援につながるよう積極的に働きかける取り組みのこと」

つまり、必要な人に必要なサービスや情報を届けるため、積極的に対象者のいる場所に出向いて働きかけることが、アウトリーチなのです。では、なぜアウトリーチが必要なのでしょうか。

なぜアウトリーチが必要なのか

介護福祉サービスの「申請主義」という壁

介護福祉の制度に基づいて行われるサービスは、原則「申請主義」となっています。申請主義とは、簡単に言うと「制度を利用するときは、自分で申し込んでくださいね」ということです。例えば介護保険の場合、65歳になると市区町村から介護保険証が送られてきますが、これは「あなたは介護保険を利用できる被保険者となりました」というお知らせでもあります。

■制度を利用できていない高齢者の現状

しかし、実際に65歳以上で介護保険を利用している人は19.9%にとどまり、 利用できるにもかかわらず、利用していない人が大勢います。 選択の自由がある以上、それは仕方のないことかもしれません。

ただし、 そのなかには「そもそも介護保険サービスを利用できると知らなかった」「介護保険で何ができるのかわからない」という人もいます。 必要な情報を適切にキャッチできておらず、そのために利用したくても利用できていないのです。 そのような人にとって、アウトリーチはとても有効な手段となるでしょう。

アウトリーチの具体的な取り組み

ここからは、アウトリーチの具体的な取り組みを紹介します。

高齢者向けの施策例:認知症初期集中支援チーム

高齢者分野の施策事例として、認知症初期集中支援チームというものがあります。これは、「複数の専門職が家族の訴え等により認知症が疑われる人や認知症の人及びその家族を訪問し、アセスメント、家族支援等の初期の支援を包括的・集中的(おおむね6か月)に行い、自立生活のサポートを行うチーム」のことです。対象者は、40歳以上で在宅で生活をしており、かつ認知症が疑われる人、または認知症の人で以下のいずれかの基準に該当する人となっています。
・医療・介護サービスを受けていない人、または中断している人で、適切な介護保険サービスに結びついていない人
・医療・介護サービスを受けているが、認知症の行動・心理症状が顕著なため、対応に苦慮している人

アウトリーチが必要な理由: 支援が届かない“見えない壁”

こうした取り組みについては、行政の窓口に行けば情報を得ることができます。もちろん、地域にある地域包括支援センターでも、さまざまな情報が入手できる体制になっています。それでも「介護保険サービスに結びつかない人」が出てくることを考えれば、アウトリーチの必要性が理解できるのではないでしょうか。

精神保健領域におけるアウトリーチの強化

また、2017年2月に開催された「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」の報告書では、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(にも包括)」の構築を目指すことが新たな理念として示されました。そして、2014年から取り組まれている精神障害者地域生活支援広域調整等事業が、そのなかのひとつに位置づけられました。

これは、「保健所等によるひきこもり等の精神障害者を医療につなげるための支援及び関係機関との調整を行う等アウトリーチ(多職種チームによる訪問支援)を円滑に実施するための支援」のことで、都道府県が主体となって実施されています。

このように介護福祉分野では、自力で支援や制度につながれない方を何とかしようとする、さまざまな施策が行われています。

アウトリーチを実施する際の注意点・メリット

続いて、アウトリーチを実施するにあたっての注意点について考えてみましょう。アウトリーチのメリットは、「介護保険サービスにつながらなかった方たちが、必要に応じて制度やサービスを利用できるようになること」、あるいは「自立支援や日常生活支援により、その人の生活の質が向上すること」です。

プライバシー性の高い場を訪問する重要性

その際、申請自体は官公庁で行いますが、アウトリーチを行うために赴くのは公の場ではなく、極めてプライバシー性の高い場所(=対象者の住まい)です。だからこそ、態度や姿勢には十分気をつけなくてはなりません。

対象者への共感的態度の重要性

アウトリーチを必要とする方たちは、基本的に何かに困っています。なのに、その困っている状況に共感しないような態度で臨めば、二度とアウトリーチを受けたくないと思われるかもしれません。そうならないためにも、対象者がどのようなことで、どれくらい困っているのかなど、事前に多くの情報を収集し、効果的な支援方法を検討した上で訪問することが大切です。

家族・周囲と本人の認識ズレへの対応

また、周囲の人たちが、アウトリーチが必要だと思っていても、当の本人やそのご家族が、支援の必要性を感じていないというケースもあります。そうしたとき、支援者に求められるのは「アウトリーチを受ける主役は、あくまで本人」だという姿勢です。

もしかしたら、本人の判断能力が低下している場合もあるかもしれません。しかし、医療の倫理原則に「善行原則」という言葉があるように、支援者はその人に最善の利益をもたらすような支援をしなければなりません。

■最終判断は本人の意思が最優先

さらに言えば、支援を受けるかどうかの選択権は支援を受ける側にあります。たとえ支援者が対象者に支援が必要だと感じても、支援は本人の意思に基づいて行われなくてはなりません。したがって、意思が表出できない状況にある際は、できる限りの方法と議論を尽くし、「本人だったらどう考えるか」という推定意思に基づいて、支援のあり方を考える必要があるでしょう。

アウトリーチが支える社会の姿

アウトリーチは、社会のセーフティネットとして、とても大切な働きです。本人の意思を大切にしながら、誰もがこぼれ落ちない社会をともに作っていきましょう。

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この記事のライター

ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役
株式会社ゆりかご 代表取締役
茨城県訪問介護協議会 副会長
茨城県難病連絡協議会 委員
水戸在宅ケアネットワーク 世話人
茨城県介護支援専門員協会 水戸地区会幹事
茨城県訪問看護事業協議会 監事
水戸市地域包括支援センター運営協議会 委員
水戸市地域自立支援協議会全体会 委員
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
日本社会事業大学大学院 福祉マネジメント研究科修了(福祉マネジメント修士)
聖路加国際大学看護リカレント課程 認知症看護認定看護師課程 在籍中

介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員・FP2級

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