Z世代にこそ介護業界を──価値観が変わる時代の働き方と育成のヒント

Z世代にこそ介護業界を──価値観が変わる時代の働き方と育成のヒント

Z世代が介護の仕事で力を発揮できる理由と、安心して働ける環境づくりのポイントを解説します。世代の特性を理解し、互いに成長できる職場づくりのヒントをお伝えします。【執筆者/専門家:後藤 晴紀】


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はじめに

執筆者/専門家

後藤 晴紀

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/9

『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。

「Z世代って、すぐ辞めるって聞くけど本当?」
「仕事にやりがいを求めすぎて、現実が見えていないのでは?」

介護・福祉の現場でも、こうした声を耳にすることがありますよね。後藤が働いている施設では、Z世代と呼ばれる職員が、常勤の中で22%を超える配置体制を取っています。そうした現場で多くの若い職員と関わり、人材育成やマネジメントを担ってきた立場からお伝えしたいのは、Z世代は[弱い世代]なのではなく、[価値観がとてもはっきりしている世代]だということです。

価値観と適した環境

Z世代は、「自分にとって何が大切なのか」「どんな働き方をしたいか」という価値観をとても大事にしています。だからこそ、「意味がわからない仕事」や「共感できない職場」からは、早い段階で距離を取ることがあります。その反面、以下のような活動には積極的です。
・誰かの役に立っていると実感できる
・人として大切にされていると感じられる
・自分の成長を認めてもらえる

つまり、こうした要素がそろった環境では、驚くほど力を発揮してくれる世代でもあるんです。介護・福祉の仕事は、一人ひとりの生活に深く関わるため、正解が1つではありません。それだけに、価値観を大切にしながら、自分らしく働きたいと考えるZ世代にとっては、本来とても相性の良い仕事なのです。

現場の視点から見えること

この記事では、次の4つの項目を取り上げ、現場の視点から詳しく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
1.なぜZ世代に介護業界がおすすめできるのか
2.Z世代が安心して一歩を踏み出すために必要な考え方
3.事業所や現場が、Z世代と長く働くためにできる工夫
4.ともに成長できる文化の醸成

なぜZ世代に介護業界がおすすめできるのか〜Z世代の特徴と、介護・福祉との親和性

Z世代とは、一般的に1997年頃から2012年頃に生まれた世代を指す言葉で、現在の10代後半から20代後半にあたります。

デジタルネイティブとも呼ばれるように、物心ついた頃からインターネットやスマートフォンが身近にあり、情報を「探す」より「選び取る」ことに慣れている世代です。加えて、就職やキャリア形成を考える時期に、コロナ禍や経済不安を経験し、将来に「見通しにくさ」を感じてきた世代でもあります。

そのため、「とりあえず我慢する」「先のことは後で考える」といった価値観よりも、今の環境が自分に合っているか、心身をすり減らさずに続けられるかを重視する傾向があるとされています。

視点の違う判断基準

ですから、Z世代が早い段階で職場を離れる背景にあるのは、忍耐力の欠如ではありません。そこにあるのは、「違和感を放置しない」「自分を守るために選び直す」という判断基準です。Z世代を知るには、まずこの点を理解することが大切かもしれません。

また、前述したように、Z世代は早い時期からデジタルに慣れ親しんできたため、情報収集は検索や動画が中心で、長文よりも要点が整理された簡潔な情報を好む傾向があります。加えて、「とりあえず覚えて」「見て学んで」といった指導よりも、理由や背景を含めて説明されることを大切にします。

介護職との相性

多様性への感度が高く、価値観や働き方の違いを自然に受け入れているのも、Z世代の大きな特徴です。「正解は1つではない」という感覚を持っているため、利用者一人ひとりに合わせた支援が求められる介護・福祉の現場とは、とても相性が良いと言えるでしょう。

さらに、上下関係よりもフラットな人間関係を好み、命令よりも対話を重視します。これは、チームでケアを考え、多職種で連携する現代の介護現場に欠かせない姿勢ですよね。

ワークライフバランス

収入だけでなく、時間の使い方や心身の安定を大切にする点も、Z世代の特徴と言われています。そのため、昇進や社会的な地位よりも、「自分らしく、長く続けられるかどうか」を仕事選びの基準にしています。

介護・福祉の仕事は、決して派手ではなく楽でもありません。それでも、人生の総仕上げとなる生活を支え、感謝や信頼を直接感じられるのは、大きな意義とやりがいにつながります。利用者の人生に寄り添い、人生そのものに関わるサービスを提供するという意味では、「究極のサービス業」と言えるでしょう。

そして、社会的意義が明確で、誰かの役に立っている実感を得やすい点は、Z世代の価値観と強く重なっていると感じます。

Z世代が安心して一歩を踏み出すために必要な考え方〜Z世代の行動特性と、介護現場の具体例

Z世代が「すぐ辞める」と言われてしまう理由の多くは、世代間の価値観の違いによるものです。

上の世代が経験してきた「我慢して覚える」「叱られて一人前になる」「見て覚える」という文化は、Z世代にとって必ずしも当たり前ではありません。特に大きいのが、相談できないまま我慢を続けることへの抵抗感だと思っています。

意見を共有できる環境の大切さ

わからないのに聞きにくい、失敗すると責められる、意見を言うと否定される。こうした状況が続くと、Z世代は「ここでは成長できない」「自分らしく働けない」と感じ、環境を変える選択をしやすくなります。しかし、Z世代の特徴からすれば、それは逃げではなく、自分を守るための選択なのかもしれません。

それを踏まえて、後藤の施設では、必ず毎月実施する1on1で、新人職員の困りごとを丁寧に確認するように努めています。

行動の理由

Z世代を理解するうえでは、「意味や目的がわからないことには力を出しにくい」という点も押さえておく必要があります。これは怠けているわけでもなければ、指示に従いたくないという意思表示でもありません。納得したうえで行動したいという、ごく自然な価値観の表れです。

例えば、「この記録、毎日書いてね」と言われた新人職員が、「なぜ書く必要があるのですか?」と質問したとします。このときに、「決まりだから」「前からそうしているから」と返されてしまうと、意欲は一気に下がってしまうでしょう。

一方で、「この記録があると夜勤の職員が安心して対応できるよ」「小さな変化に早く気づけて、利用者さんを守れるんだ」と明確な理由を伝えられると、前向きに取り組めるのがZ世代です。

言語化から始める職場づくり

介護の仕事は、「なぜそれをするのか」を言葉にしやすい仕事でもあるので、指示や報告、声かけはできるだけ言語化してほしいと思います。そうした配慮は、新人職員のモチベーションとケアの質につながるだけでなく、利用者の安心や生活の質の向上にもつながるはずです。

事業所や現場が、Z世代と長く働くためにできる工夫〜定着を左右する関わり方

Z世代が職場を選んだり、長く続けられるかどうかを判断したりする際に、最も重視しているのが「人との関係性」です。仕事内容や待遇よりも、安心して話せる環境があるかどうかを敏感に感じ取っています。

一緒に考える接し方

例えば、「この声かけで合っていますか?」「判断に迷ったとき、どうしたらいいですか?」と相談したときに、「今は覚えるだけでいいよ」「そのうちわかるから」と返されると、「考える必要のない存在なのかな」と感じてしまう可能性があります。

一方で、「いいところに気づいたね」「一緒に考えてみようか」と声をかけると、「ここにいても大丈夫」と感じてもらえるでしょう。

Z世代は、「一緒に考える」という姿勢をとても大切にします。そのため、人間関係の質が、そのまま定着率につながるとも言えます。これはZ世代と向き合ううえで、欠かせない視点なので、ぜひチームで共有してくださいね。

ともに成長できる文化の醸成〜Z世代が育つ職場の条件

Z世代の成長を促すためには、「失敗をどう扱うか」がとても重要だと考えています。失敗したとき、人格や存在を否定されることに、強い不安を感じる傾向があるからです。

介護現場には、常に「命を預かっている」という緊張感がありますよね。しかし、その緊張感が叱責や萎縮につながってしまうと、確認や相談がしづらくなり、かえって失敗のリスクが高まります。

学びに変える伝え方

そうならないために大切なのは、失敗を責めることではなく、学びに変えることです。
「なぜ起きたのか」「失敗を防ぐ工夫はないか」などを一緒に考え、共有することで、「次はこうしよう」という前向きな姿勢を持てます。また、それによって、失敗が貴重な経験に変わります。言い換えるなら、失敗そのものを成功体験に変えるということです。

失敗を「反省して終わり」にしない関わり方は、Z世代だけでなく、職場全体の仕事の質を高めることにもつながるでしょう。

おわりに

Z世代との関わり方を考えるにあたって、大事にしたいのは「意味を伝えること」「対話を大切にすること」「失敗を学びに変えること」です。

ただし、それは若い世代だけに限った関わり方ではありません。ここまで読んできて気づいた方も多いと思いますが、その3つを実践することで、「どの世代にとっても働きやすい職場」がつくれます。もちろん、後藤の施設でも全職員に対して意識するようにしています。

視点を変えてよりよい職場へ

Z世代と向き合うことは、人材確保のためだけではなく、介護現場そのものをより良くしていく取り組みです。だからこそ、「最近の若いもんは」とグチる前に、関わり方を少し見直してみませんか?その積み重ねが現場の力を育て、次世代の介護・福祉へとつながっていくはずです。

それを考えると、変わるべきはZ世代ではなく、私たち育成者側なのかもしれませんね。

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この記事のライター

・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士

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