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【介護職の新人教育】仕事を覚えるのが遅い新人への指導法とは?施設長経験者が解説

【介護職の新人教育】仕事を覚えるのが遅い新人への指導法とは?施設長経験者が解説

介護施設で新人指導を担当されている方からのお悩みです。4カ所の特別養護老人ホームで施設長を務めた経験を持つ伊藤浩一さんに、新人介護職員を指導する際のポイントを詳しく解説していただきます。【執筆者/専門家:伊藤浩一】


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本日のお悩み:新人への指導方法・関わり方

最近職場に入ってきた新人の指導を担当しているのですが、仕事を覚えるのが遅く、対応に悩んでいます。指導方法や関わり方、成長を促すための工夫についてアドバイスをください。

介護職の新人が仕事を覚えられないのは本人の問題だけではない

執筆者/専門家

伊藤 浩一

https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/14

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

新人は「組織を映す鏡」である

「最近入職した新人の仕事を覚えるのが遅く、どのように指導すればよいか悩んでいます」。介護現場で働いていると、このような相談をよくいただきます。

新人一人ひとりには得意・不得意があり、成長のスピードも違います。そのため、指導中に「覚えるのが遅いな」と感じる場面もあるかもしれません。しかし、私は新人が育たない原因を、本人の能力だけに求めるべきではないと考えています。新人は、「組織を映す鏡」でもあるからです。

新人指導で最も重要な「認識のズレ」の解消

新人がつまずく背景には、教育のしくみや業務の標準化など、組織が改善すべき課題が隠れていることも少なくありません。だからこそ、新人指導では、「指導者と新人の認識のズレ」に注意する必要があります。

そのズレをなくすためには、二つの視点が重要だと考えます。一つは、指導する側の「教え方」を見直すことです。もう一つは、「適材適所」という視点を持つことです。

「このくらいはできるはず」のわな

指導者と新人で完成形のイメージが違う

私は新人時代、お茶にとろみをつける仕事を任されたことがあります。その時、先輩から言われたのは、「お茶にとろみをつけておいて」ということだけでした。そのため、自分なりに考えて行ったのですが、結果的にとろみがダマになってしまい、「こんなこともできないの!」と叱られました。

指導者は「とろみのつけ方くらい知っていて当然」と思っていたのでしょう。しかし、新人だった私は、「具体的な方法を教えてもらっていないのに怒られた」と納得しづらさを感じました。

ここに、大きなズレがあります。

理不尽さを感じると新人は質問できなくなる

新人は「理不尽だ」と感じると、質問しづらくなります。一方で指導者は「教えても覚えない新人だ」と感じます。すると、お互いに不信感が生まれ、教育がうまく進まなくなるでしょう。

介護現場では、「初任者研修で習ってきたはず」「実習で経験してきたはず」「前の施設でやっていたはず」という言葉を耳にすることがあります。しかし、それらはすべて思い込みになり得ます。施設が変われば食事介助の方法も、排泄介助の方法も、記録の書き方も、申し送りのルールも違います。

それを踏まえると、できないのは新人の能力のせいではありません。指導者の頭の中にある「完成形」が共有されていないだけなのです。

「目玉焼き」の例でわかる教え方の落とし穴

「目玉焼きを作ってください」で十人十色になる

以前、医師を指導する「指導医講習会」に参加したことがあります。そこで行われた演習が、とても印象的だったのでお話しさせてください。テーマは、「目玉焼きの作り方を作業分解してください」というものでした。

「目玉焼きを作る」と聞くと、誰でもできそうに思います。ただし、作り方については人それぞれ。

・卵を直接フライパンに割るのか、一度器に割るのか
・フライパンはどのくらいまで温めるのか
・油はひくのか
・火加減は強火か弱火か
・黄身は半熟なのか、固焼きなのか
・水を入れて蒸すのか、入れないのか

「目玉焼きを作る」という作業は、数十の工程に分解できるので、十人いれば十通りの目玉焼きができます。

つまり、「目玉焼きを作ってください」という言葉だけを伝えた場合、人によって作り方や出来上がりのイメージがまったく違うのです。

作業を細かく分解して伝える重要性

介護現場での活動も同じです。例えば、「食事介助をお願いします」という言葉の中には、
・食札の確認や姿勢の調整
・声掛け
・一口量の見極め
・飲み込みの確認
・食後の口腔ケア
・記録

など、多くの工程が含まれています。だからこそ、「このくらいはできるだろう」ではなく、「一つずつ確認しながら教えよう」という姿勢が大切なのです。

新人教育の質を高めるマニュアル活用術

なぜマニュアルが新人育成に欠かせないのか

ただし、「一つずつ確認しながら教える」という姿勢は、個人の努力だけでは継続が難しいもの。それを組織として担保するために、マニュアルや手順書があります。

私は新人指導の際、まず「業務マニュアルや手順書は最新のものになっているのか?」を担当者に確認します。マニュアルというと「新人教育のためのもの」と思われがちですが、本来の役割はそれだけではありません。

教育のばらつきを防ぐ共通ルールづくり

マニュアルがあれば、誰が教えても同じ内容を伝えられます。また、できていることとできていないことを共通認識として確認でき、教育の質を一定に保てます。更に、介護の質も一定に保てます。
マニュアルは、「組織全体の品質を守るためのしくみ」でもあるのです。

一方で、マニュアルがないまま曖昧な状態で教育を終えてしまうと、新人は自己流で仕事を覚えます。すると業務にムラが生まれ、他の職員がフォローすることになりかねません。そして、そうした状況が続くと、「また私がフォローするの?」という不満や疲弊につながり、新人教育の問題が組織全体の生産性低下へと発展してしまいます。

指導しても成長が遅い新人への向き合い方

雑草の生存戦略に学ぶ「適材適所」

マニュアルを整備し、ていねいに指導しても、成長のスピードには個人差があります。そこで大切になるのが、「適材適所」という考え方です。

以前、「雑草はなぜ強いのか」という記事を読みました。雑草は、大木のように高く伸びることを目指すのではなく、自分が育ちやすい環境、自分が有利になれる環境を選び、その場所に柔軟に適応していこうとすると言われています。だからこそ、他の植物よりも強く、たくましく生きていけるのです。

できないことより強みに目を向ける

人も同じではないでしょうか。介護職だからといって、全員が同じ強みを持つ必要はありません。利用者様との会話が得意な人、観察力に優れている人、身体介助が得意な人、記録を書くことが得意な人、レクリエーションが得意な人がいて、それぞれに強みを発揮すれば、介護の質は上がります。

新人教育では、「できないこと」を克服することも大切ですが、それ以上に「何が得意なのか」を見つけることも重要です。介護職として最低限の知識や技術は身につける必要がありますが、その先は全員を同じように育てる必要はありません。一人ひとりの強みを生かし、役割を考えることが、組織全体の力になるはずです。

新人教育で見落とされがちな「指導者の負担」

指導者を孤立させない

ご相談内容から、指導者であるあなたが、とても熱心に新人教育に取り組まれていることが伝わってきました。しかし、その熱心さがあるからこそ、気をつけていただきたいことがあります。それは、指導者が孤立してしまうことです。

熱心に指導していると、
「なぜ身につかないのだろう」
「何度教えても覚えてくれない」
「私の教え方が悪いのだろうか」

といった焦りや不安を抱えてしまうことがあります。また、その気持ちが積み重なると、
「どうしてできないの?」

という新人への不信感や怒りへと変わってしまうこともあります。

私が心配するのは、指導者が熱心であるがゆえに、メンタル不調に陥ることです。新人教育が、指導担当者一人だけの仕事になっていませんか? 周囲の職員が、「我関せず」という雰囲気になっていませんか?

新人教育は指導担当者一人の仕事ではない

介護の仕事は、指導者が24時間つきっきりで教えることはできません。新人はさまざまな勤務をさまざまな職員と経験しながら独り立ちしていきます。だからこそ、新人教育は組織全体で支える必要があるのです。

指導者の上司が定期的に1on1を行い、「困っていることはありませんか」と声をかけて話を聞く。その上で教育の進捗をチーム全体で共有する。指導方法に迷いがあれば、いっしょに考える。こうしたしくみがあるだけでも、指導者の心理的負担は大きく軽減されます。新人を支えるためには、まず指導者を支えること。私は、それも組織の大切な役割だと考えています。

新人教育は組織全体の成長につながる

新人が定着しやすい職場づくりのために、指導体制を見直す

私は、新人が定着しやすい職場では、指導体制や受け入れの仕組みが機能していることが多いと考えています。私が施設長を務める特養もくせいでは、定着に向けた目標を設けて取り組んでおり、一定の期間、目標を継続して達成してきました。

新人が辞めたときは、「本人に問題があった」と考えるのではなく、次の問いを組織に向けてみてください。教え方は適切だったか。マニュアルは整備されていたか。質問しやすい環境だったか。その人の強みを生かせる役割を考えられていたか。

まとめ

新人教育とは、新人だけを育てることではありません。組織の教育力を育てることでもあります。「このくらいはできるはず」という思い込みをなくし、ていねいに教えるしくみを整えること。そして、一人ひとりの強みを生かせる役割を考えること。その積み重ねが、新人が安心して成長できる環境を作り、結果として質の高い介護や働き続けたいと思える組織の実現につながっていくのではないでしょうか。

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この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
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