分かりやすい看護記録とは
■執筆者
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電子カルテが普及し、多職種との情報共有が迅速になった現代では、「誰が読んでも状況と意図がわかる看護記録」が、強く求められています。そうした中、SOAPは患者や利用者の情報をわかりやすく、かつ体系的に整理できる記録法として、多くの医療施設や介護施設で採用されています。
しかし、看護師の中には「S・O・A・Pをどう書き分けるべきか迷う」「判断に自信が持てない」「文章が長くなりすぎる」など、SOAPによる記録に悩みを抱える人も少なくありません。
そこで、本記事では、SOAPの基本的な考え方から、現場でそのまま使える書き方のポイント、NG例、よくある症状に基づく記載例までを詳しく解説します。
SOAPとは?
なお、S・O・A・Pの各項目は、それぞれ「患者の訴え」「観察した事実」「看護師の判断」「今後のケアの方針」を表しています。
・O…Objective(客観的情報)=観察した事実
・A…Assessment(評価)=看護師の判断
・P…Plan(計画)=今後のケアの方針
■多職種連携を支えるSOAP
また、SOAPは、看護師自身が「何が問題なのか」「なぜそう判断するのか」「次に何をすべきか」を整理・分析するための枠組みとしても有用です。電子化によって看護記録の入力欄が細分化され、書き方に迷う場面が増えたからこそ、SOAPの基本的な考え方を押さえておくことが、質の高い記録と適切なケアにつながるでしょう。
【実践】SOAPの書き方ポイント(良い例・NG例つき)
■S:主観的情報(Subjective)
<何を記録するか>
痛み、息苦しさ、不安、だるさ、食欲、睡眠、気分など、患者が口にした症状
<書き方のポイント>
・患者の発言をそのまま記載する
・痛み・不安はスケール評価を活用する
・推測表現(「~と思われる」「つらそう」「痛そう」など)は記載しない
<良い例>
・「ズキズキして眠れない。痛みは10段階で7くらい」と話す
・「夜になると不安が強くなる」と訴える
<NG例>
・痛そうにしていた → 患者の言葉ではなく看護師の憶測
・不安がある様子 → 患者の発言を要約しており、実際の言葉が記録されていない
■O:客観的情報(Objective)
<何を記録するか>
バイタルサイン、検査値結果、身体所見、歩行状態、食事量、他職種の記録や
共有された情報など
<書き方のポイント>
・数値・量など、客観的に測れる情報を記載する
・表情や行動は具体的な事実を記載する
・推測表現(「~と思われる」「つらそう」「痛そう」など)は記載しない
<良い例>
・呼吸数 28/分、SpO₂ 90%(room air)
・椅子から立ち上がる際にふらつきがあり、支持が必要
<NG例>
・呼吸が早い気がする → 「気がする」は推測であり客観的情報ではない
・歩行状態に問題あり → 具体性に欠けており、どのように問題なのかがわからない
■A:評価(Assessment)
<何を記録するか>
・SとOから導き出した問題点
・問題が生じている原因(身体・心理・環境など)
・現在の状態の評価(改善傾向か悪化傾向かなど)
<書き方のポイント>
・根拠と推論を明確にし、なぜその判断に至ったかを記載する
・診断名は医師の領域なので記載しない
・今後のリスク(脱水・転倒など)についても評価する
<良い例>
・発熱・悪寒・食事摂取量の低下から、感染兆候が強く疑われる
・入院による活動量減少が筋力低下を招き、移動時に支持を要する。
転倒リスクが高い状態である
<NG例>
・インフルエンザの可能性 → 医師の診断領域に踏み込んでいる
・筋力が低下している → Oの事実を述べているだけで、問題やリスクへの判断が示されていない
■P:計画(Plan)
<書き方のポイント>
・具体的かつ実行可能な内容にする
・時間軸・頻度を明確にする
・観察項目や報告基準を示す
・Aの内容と論理的につながっているかを確認する
<良い例>
・体位を整え、疼痛スケールを2時間後に再評価する
・1時間後に尿量・皮膚状態を確認し、医師へ報告する
<NG例>
・様子を見る → 具体的な行動や再評価の基準が示されていない
・必要時対応 → 何をもって「必要」と判断するかが示されていない
よくある症状に基づくSOAPの記載イメージ(モデル例)
■発熱
●S
「急に寒気がして体がだるい。関節が痛い」と話す。
「食欲があまりない」と訴える。
●O
体温 38.8℃、脈拍 104/分、悪寒の訴えと震えあり。鼻汁少量。咳嗽あり。
食事摂取量 40%。歩行は自立だが動作緩慢。
●A
発熱・悪寒・関節痛が見られ、感染症が疑われる状態と判断する。
経口摂取量が減少し、脱水リスクが高い。
●P
水分摂取を促し、1時間後にバイタル・症状の変化を再評価する。
呼吸器症状に変化(呼吸数増加・SpO₂低下・咳嗽増悪)があれば医師へ報告する。
食事摂取量を経過観察し、次回評価時も50%未満が続く場合は、栄養士への相談を検討する。
■疼痛
●S
「動くと傷が引きつるように痛い。横になっていると少し楽」
「痛みは10段階で6くらい」と話す。
●O
術創部に発赤なし。体動時に表情をしかめる。
歩行はゆっくりだが自立。
●A
術後疼痛により活動量が低下しており、
NRS6/10の中等度疼痛がADLに影響している状態と判断する。
●P
医師の指示に基づき鎮痛薬を投与。30分後に痛みの程度を再評価。
日常動作は可能な範囲で自立を促しつつ、過剰な負担を避ける。
■呼吸苦
●S
「息がしづらい」「深く吸えない感じ」と訴える。
●O
呼吸数 26/分、SpO₂ 92%(room air)
発話時に息継ぎが必要で、会話が中断する様子を認める。
吸気時に頸部筋の収縮を認める。
●A
呼吸数増加とSpO₂低下が見られ、努力呼吸を呈している。
酸素化低下の可能性があり、状態悪化のリスクが高いと判断する。
●P
体位調整(ファーラー位)を行い、5分後に呼吸状態とSpO₂を再評価。
SpO₂が改善しない場合、医師に報告。
■ADL低下
●S
「最近足が弱くなった気がする」「歩くとふらっとする」と話す。
●O
歩行10mでふらつきあり。支持が必要。
下肢筋力低下(MMT 3)。
●A
筋力低下により歩行が不安定となっており、
転倒リスクが高い状態と判断する。
●P
歩行時は見守りを行う。
リハビリ依頼を検討(PTと連携)
転倒リスクの高い場面を評価し、環境調整を実施。
■不安の増大
●S
「夜になると不安が強くなる」「急に胸がざわざわする」と訴える。
●O
入眠困難あり。
消灯後、夜間に病棟内を3回歩行する様子を認める。
●A
身体症状への不安により睡眠パターンが乱れており、
生活リズムに影響が出ている状態と判断する。
今後の不眠や精神的負担の増大が懸念される。
●P
就寝前の睡眠環境の調整と、不安についての傾聴を行う。
翌朝、睡眠状況と精神症状の変化を医師に報告。
必要時はソーシャルワーカーとも連携。
SOAPをうまく書けないときのチェックリスト
■1.全体の確認
→ NOの場合:情報を整理し、優先度の低い内容を削るか別のSOAPに分ける。
■2.Sのチェック
→ NOの場合:患者に再度声をかけ、実際の発言を確認する。
■3.Oのチェック
→ NOの場合:情時間・回数・頻度・量など、数値化できる情報を追加する。
■4.SとOの関係性
→ NOの場合:訴えに対応する観察・測定を追加で確認する。
■5.Aのチェック
→ NOの場合:「なぜそう考えたのか」「何が問題と判断したのか」を言語化する。
■6.AとPのつながり
→ NOの場合:「だから何をするのか」を意識して書き直す。
■7.Pの具体性
→ NOの場合:時間と行動を明確にし、予定表に書けるレベルまで具体化する。
■8.再評価の視点
→ NOの場合:いつ・何を見て・どう評価するのかをPに追加する。
電子カルテ時代に意識すべきSOAPの扱い方
■1.情報漏洩を防ぐ意識を持つ
機密情報の漏洩は、世間からの信頼を損なうだけでなく、法的な処罰や損害賠償請求にも発展しかねません。以下の基本的なルールを、日常的に徹底しましょう。
・ID・パスワードを第三者に教えない
・データを外部に持ち出さない
■2.個人情報の扱いとプライバシーへの配慮
記録に必要なのは、「治療や看護の判断・実践に関係する情報のみ」だと理解しておきましょう。
・「同室者とよくトラブルになる」
・「借金問題で悩んでいるとのこと」
■3.情報の書き換えに注意を
そのため、過去の記録を安易に書き換えると、記録の整合性が崩れ、医療安全が損なわれるリスクがあります。後から状況が変わった場合でも、過去の記録を上書き・削除せず、「追記」と記入した上で、現時点の情報を日時と理由がわかる形で記載することが基本です。
<避けるべき行為>
・後から検査結果が判明したことを理由に、当時の情報に基づくAを修正する
・状態が改善したことを理由に、当時記載したSやOの一部を削除する
<望ましい例>
(追記)〇月〇日15:30
血液検査結果判明。CRP低下を確認。
前回のAは当時の情報に基づく判断であり、
現時点では感染症改善傾向と判断する。
(追記)〇月〇日9:00
本日朝より歩行時のふらつき軽減。
■4.法的文書としての正確性を保つ
特に重要なのは、事実(O)と判断(A)を明確に分け、時系列を正しく残すことです。
<望ましい例>
O「16:00 歩行時のふらつき増強。廊下で壁に手をつく様子あり」
A「降圧薬内服後より血圧低下傾向あり。副作用の可能性があると判断する」
<避けたいNG例>
O「ふらつきが多く、いつもと違う様子」
A「降圧薬の影響が考えられる」
まとめ
それを踏まえるなら、整理された質の高いSOAPは、医療現場全体の信頼性を支える大切な要素といえるでしょう。SOAPに苦手意識がある人は、当記事を参考にしながら、基本的な考え方・書き方を身につけることからはじめてみてください。
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